サステナビリティ経営を推進するためのデータ利活用の重要性とポイント
「サステナビリティ情報開示の義務化により日本企業が受ける影響とは」、「SSBJ基準に沿ったサステナビリティ情報開示において、企業が必要な対策とは」の記事で、SSBJ基準による企業への影響(対象企業、適用スケジュール、開示項目)と、必要な対策を解説しました。
本記事では、サステナビリティ推進を単に規制対応として捉えるのではなく、経営課題として捉え企業成長につなげるための考え方について解説します。
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サステナビリティのデータ活用の現状
近年、企業を取り巻く環境が複雑化する中で、投資家からは持続的にどう企業を成長につなげるかという点でサステナビリティ関連のデータが注目されています(ESG投資)。その一方で多くの企業では開示を目的としたデータ収集に留まっており、企業成長に活かしきれていない企業が多いのが現状です。
投資家から企業への期待
サステナビリティ関連情報は非財務情報と整理されますが、「未来の財務情報」とも称されることが多く、長期的な企業価値を評価する際に、ESG指標(環境、社会、ガバナンス)が用いられます。経済産業省の報告書によると、投資家が重視する経営指標としてESG指標を重視する傾向にあります。
出所)経済産業省 サステナビリティ関連データの効率的な収集及び戦略的活用に関する報告書 (中間整理)
企業におけるサステナビリティデータ活用の課題認識
投資家がESG指標を重視する状況下で、企業側がサステナビリティのデータを経営にどのように活用しているか実態を確認したところ、次に示すアンケート調査では過半数が「経営の意思決定に活用できていない」および「事業の現場で活用できていない」との回答が確認され、多くの企業が開示のためのデータ収集に留まっている示唆が得られました。
出所)デロイトトーマツグループ ESGデータの収集・開示に係るサーベイ2022
サステナビリティ経営推進のための考え方
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは
サステナビリティ推進を単に規制への対応と捉えるのではなく、企業の成長につなげサステナビリティ経営として推進するには、社会の課題(社会のサステナビリティ)を経営課題(企業のサステナビリティ)として捉え、長期的にステークホルダーへ価値提供を行うことが重要になります。そのためには、ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点で事業変革する必要があります。こうした事業変革のことを伊藤レポート3.0では、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)と提唱しています。
SX実現のためのデータ活用体制
サステナビリティ対応を企業価値向上につなげるには、ESGデータを活用した経営戦略を立案し、進捗状況を定期的にモニタリングする必要があります。そのために、サステナビリティ部門・IT部門の本社スタッフ組織がシステム整備等の仕組み構築を行ったうえで、KPIとして事業部門にミッションを課すことにより事業変革(SX実現)を推進することが重要です。
まとめ
サステナビリティのデータ活用について、投資家の視点と、企業側での活用にギャップがあり、企業は情報開示対応の枠に留まらず本質的な成長につなげるため、経営指標や、KPI指標に活用し事業変革を進めることが重要です。こうして、日本の各企業がSXを推進することによりグローバルな競争力の強化につながるはずです。
サステナビリティ2026問題
2027年3月期から本格化する開示義務化を“機会”として捉え、サステナビリティデータを利活用したアジリティの高い経営改革のため、2026年までにサプライヤーを含むデータ基盤整備およびサスティナビリティ・トランスフォーメーション(SX)推進のための体制およびを整備できるかが、企業において重要な分岐点となります。
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