CO2排出量の計算方法とは?
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Scope3排出量算定における主な課題に焦点を当て、脱炭素経営を加速させる効果的な対処法をご紹介したセミナーアーカイブはこちらから。
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.CO2排出量の計算式
- 3.活動量とは?
- 4.排出係数とは?
- 5.Scope1の計算方法
- 5.1.Scope1の排出量算定の基本的なステップ
- 5.2.具体例
- 6.Scope2の計算方法
- 6.1.Scope2の排出量算定の基本的なステップ
- 6.2.具体例
- 6.3.注意点
- 7.Scope3の計算方法
- 7.1.Scope3の排出量算定の基本的なステップ
- 7.2.具体例
- 7.3.注意点
- 8.まとめ
はじめに
環境問題が毎日のニュースで取り上げられるようになり、CO2排出量を減らす必要性が高まっています。しかし、「CO2排出量って一体どうやって計算するの?」と疑問に思う方も多いでしょう。この記事では、CO2排出量の計算方法・算定方法について解説します。
CO2排出量の計算式
CO2排出量は、排出係数を用いて以下の式で計算されます。
CO2排出量 = 活動量 × 排出係数
活動量とは?
CO2排出量を計算するには「活動量」が必要です。これは、何か行動をした結果としてどれくらいCO2が排出されるかを知るための「量」です。電気の使用量、燃料の使用量、輸送の距離などが該当します。例えば、車で100km走った場合、その100kmが活動量になります。
排出係数とは?
次に、「排出係数」です。これは活動量1単位あたりにどれだけのCO2が排出されるかを示す数値です。燃料や電力、またはその他の原料・材料などに適用されます。排出係数は、燃料の種類やエネルギー供給源、輸送手段、廃棄物処理方法など、排出源ごとに異なる値が設定されています。例えば、ガソリン1リットルあたりに排出されるCO2の量などがこれに該当します。
以下に、いくつかの具体的な排出係数の例を示します。
- 燃料: 石油、石炭、天然ガスなどの燃料の燃焼によって発生するCO2排出量は、燃料の種類と燃料消費量(活動量)に基づいて計算されます。例えば、ガソリンの排出係数は約2.32 kg-CO2/Lであり、ガソリンを1リットル燃焼した場合、約2.32 kgのCO2が排出されることになります。
- 電力: 電力消費によるCO2排出量は、電力供給源(火力発電、水力発電、原子力発電など)と消費電力量(活動量)に基づいて計算されます。各国や地域で電力供給源が異なるため、電気事業者によって排出係数も異なります。例えば、日本の小売電気事業者のCO₂排出係数は、算定・報告・公表制度に基づく全国平均値ベースでは0.462kg-CO2/kWh(2018年度)であり*、1kWhの電力を消費すると、約0.426 kgのCO2が排出されることになります。
- 輸送: 輸送によるCO2排出量は、輸送手段(自動車、鉄道、航空機、船舶など)と移動距離(活動量)に基づいて計算されます。例えば、乗用車(ガソリン車)の排出係数は約0.015 kg-CO2/kmであり、1km走行すると、約0.015 kgのCO2が排出されることになります。
*出典:環境省「電気事業分野における地球温暖化対策の 進捗状況の評価結果について」
排出係数は、一般的には政府機関や国際機関が提供するデータベースから参照することができます。例えば、日本では環境省が排出係数のデータベースを公開しており、様々な排出源の排出係数が提供されています。国際的な排出係数データベースとしては、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)が提供する「2006 IPCCガイドライン(2019年改良版)」があります。また、LCA活用推進コンソーシアムが提供する「インベントリデータベースIDEA」や、海外のCO2排出量算定に利用できる「ecoinvent データベース」もあります。
CO2排出量の計算において、適切な排出係数を選択することが重要です。排出係数は、技術の進歩やエネルギー政策の変化により時間経過とともに変化することがあるため、定期的に最新のデータを参照し、正確なCO2排出量の計算を行うことが求められます。また、業種や地域に特化した排出係数が存在する場合があるため、状況に応じて適切なデータを選択することが望ましいです。
参考:環境省:算定方法・排出係数一覧 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」
参考コラム:グローバル企業にとって必要なecoinvent Databaseとは?
Scope1の計算方法
Scope1には、組織が直接コントロールしている排出源から発生する温室効果ガス(GHG)排出量が含まれます。これには、燃料の燃焼、製造プロセス、所有・管理する車両の排気などがあります。
Scope1の排出量算定の基本的なステップ
- 活動範囲の特定: まず、組織が直接コントロールしている排出源を特定します。これは、所有・運営している施設、車両、機器などが対象になります。
- データ収集: 次に、それぞれの排出源に関連するデータを収集します。例えば、燃料燃焼に関する場合、使用する燃料の種類と量を収集します。
- 排出係数の選択: 適切な排出係数を選択します。この排出係数は、通常、政府機関や信頼性のあるデータベースから取得します。
- 計算: 収集した活動量データと選択した排出係数を用いて、GHG排出量を計算します。基本的な計算式は次のとおりです:
CO2排出量 = 活動量 × 排出係数
具体例
- 燃料燃焼: 組織が所有するボイラーで使用される天然ガスの量を測定し(活動量)、その量に適用する排出係数(天然ガス例:2.698kg-CO2/kg)を掛けて、CO2排出量を計算します。
- 製造プロセス: 特定の製造プロセスで排出されるGHGを測定する。例えば、セメント製造過程で排出されるCO2は、使用する原料とその量(活動量)に基づいて排出係数を掛けて計算されます。
Scope1の排出量算定は、組織が最もコントロールしやすい排出源に関わるものですので、排出削減のアクションを考える際には特に重要なステップとなります。最新の排出係数や計算方法を用いることで、より正確かつ信頼性の高いGHG排出量のデータを得られます。
Scope2の計算方法
Scope 2には、組織が購入または使用する電気、熱、蒸気、冷熱などの間接エネルギーによって発生する温室効果ガス(GHG)排出量が含まれます。主に電力消費がこのカテゴリに該当する場合が多いです。
Scope2の排出量算定の基本的なステップ
- 購入・使用エネルギーの特定: 組織が購入または使用する電気、熱、蒸気、冷熱の種類と量を特定します。
- データ収集: それぞれのエネルギー源に関連するデータを収集します。これは通常、エネルギーの使用量(kWh、GJ、MJなど)として表されます。
- 排出係数の選択: 使用するエネルギー源に対応する排出係数を選択します。排出係数は、政府機関や研究機関が提供するデータベースから取得できる場合が多いです。
- 計算: 収集した活動量データと選択した排出係数を用いて、GHG排出量を計算します。基本的な計算式は以下のようになります。
CO2排出量 = エネルギー使用量 × 排出係数
具体例
- 電力: 組織が使用する電力量(例えば、1,000 kWh)に対応する排出係数(例:0.5 kg-CO2/kWh)を掛けて、CO2排出量(500 kg-CO2)を計算します。
- 熱・蒸気: 組織が購入する熱や蒸気の量(例えば、200 GJ)に対応する排出係数(産業用蒸気例:0.06 kg-CO2/GJ)を掛けて、CO2排出量(12 kg-CO2)を計算します。
- 冷熱: 冷熱の場合も、使用量とその排出係数を用いて計算します。ただし、冷熱の排出係数は一般的には電力よりも低くなることが多いです。
注意点
エネルギー供給会社や地域によっては、排出係数が異なる可能性があります。この場合、具体的な地域や電力事業者に対応する排出係数を用いるとより精度の高い計算が可能です。
グリーンエネルギーを購入している場合、その電力の排出係数は通常ゼロまたは非常に低い値になります。このような特殊なケースも考慮に入れて計算する必要があります。
Scope2の排出量算定は、電力消費を中心とした環境負荷の把握と削減において非常に重要です。最新の排出係数と計算方法を用いることで、正確なGHG排出量のデータを得ることができます。
Scope3の計算方法
Scope3は、組織が直接コントロールしていないが、その業務活動に起因する温室効果ガス(GHG)排出量に対する分類です。これには、サプライチェーンでの排出、従業員の通勤、製品の使用・処分などが含まれます。
Scope3の排出量算定の基本的なステップ
- カテゴリの特定: Scope3には15のカテゴリがあります(製品・サービスの購入、運輸・流通、製品の使用・処分など)。最初に、どのカテゴリが組織に関連するかを特定します。
- データ収集: 関連するカテゴリごとに、排出量に影響を与える活動のデータを収集します。このデータは、量、距離、時間など多様な単位で表される場合があります。
- 排出係数または排出原単位の選択: 適切な排出係数または排出原単位を選択します。組織独自のデータやサプライヤーから提出されたデータ、産業ガイドライン、公的なデータベースなどから取得できます。
- 計算: 収集した活動量データと選択した係数を用いて、GHG排出量を計算します。
CO2排出量=活動量×排出係数(または排出原単位)
具体例
- サプライチェーン: ある製品の製造に必要な原材料のCO2排出量を、排出原単位データベースから得られる排出原単位を用いて計算します。
- 従業員の通勤: 従業員が使用する交通手段(車、電車、バス等)とその距離をもとに、排出係数を用いてCO2排出量を計算します。
- 製品の使用・処分: 製品が顧客によってどのように使用・処分されるかに基づいて、その排出量を計算します。これには専門的なライフサイクル評価(LCA)が用いられることもあります。
注意点
Scope3の排出量は非常に多様な活動に関連するため、データ収集が複雑で時間がかかる場合があります。
特定のサプライヤーやパートナーから排出データを直接取得することが理想的ですが、これが不可能な場合は、推定値や平均値を用いることがあります。
国や産業、地域によっては、Scope3の排出量に関するガイドラインやツールが存在することもあります。たとえば、日本の環境省が提供するガイドラインなどが参考になる場合があります。
Scope3の排出量の詳細な計算と管理は、サプライチェーン全体の持続可能性を高めるために非常に重要です。多くの組織では、Scope3が全排出量の大部分を占めるため、その削減は組織全体の環境負荷を大きく減らすことにつながります。
参考コラム:サプライチェーンの排出量算定とは?
まとめ
CO2排出量の計算は、企業や個人が環境に与える影響を把握し、温室効果ガス排出削減に取り組む上で不可欠です。活動量、排出係数、排出原単位を用いてCO2排出量を算出し、Scope1、Scope2、Scope3に分けて詳細に把握することが重要です。また、環境省のガイドラインや排出原単位データベースを参照しながら、正確なCO2排出量の計算を行いましょう。サプライチェーン全体でのCO2排出量の把握も、企業が持続可能な経営を目指す上で大切な要素です。
booost technologiesでは、効率的な活動量の収集と最新の排出係数によるCO2排出量の計算・算定・見える化ができる「booost GX」とコンサルティングを提供しております。CO2排出量算定でお困りの方は下記からお問い合わせください。