Scope3削減とサーキュラーエコノミーの関係とは?資源循環が排出量削減につながる理由を解説

Scope3排出量削減に取り組む企業が増える中、再生材利用や長寿命化、リサイクルといったサーキュラーエコノミー(循環経済)施策への注目も高まっています。一方で、「サーキュラーエコノミーとScope3はどのような関係があるのか」「CFPや製品サステナビリティ規制とどうつながるのか」を整理できている企業は多くありません。本記事では、サーキュラーエコノミーがScope3削減につながる理由を解説するとともに、CFPや製品サステナビリティ規制との関係について整理します。

本記事のポイント

  • サーキュラーエコノミーと脱炭素は目的が異なるが、実務上は密接に関係している
  • 再生材利用や長寿命化は、Scope3カテゴリ1・5・12などの排出量削減につながる
  • サーキュラーエコノミー施策は、原材料調達から物流、廃棄までサプライチェーン全体に影響する
  • CFPは製品単位の排出量を評価する指標だが、サーキュラーエコノミーの価値を評価しきれない場合もある
  • サーキュラーエコノミーは、Scope3・CFP・製品サステナビリティ規制を理解するうえで重要な考え方である

1.サーキュラーエコノミーと脱炭素は何が違うのか

サーキュラーエコノミー(Circular Economy:循環経済)と脱炭素は、どちらも企業のサステナビリティ経営において重要なテーマです。しかし、両者は本来異なる目的を持っています。

サーキュラーエコノミーは、資源をできるだけ長く利用し、新規資源の利用を削減することで資源(価値)を循環させることを目指す考え方です。一方、脱炭素は温室効果ガス(GHG)排出量を削減し、気候変動への影響を抑えることを目的としています。

それぞれの違いを整理すると、以下のようになります。

項目サーキュラーエコノミー脱炭素
主な目的資源循環温室効果ガス排出量削減
主な対象原材料・製品・廃棄物GHG排出量
主な取り組み再生材利用、長寿命化、再利用、リサイクル省エネ、再エネ導入、燃料転換、排出削減
主な指標例再生材利用率、回収率、資源循環率Scope1・2・3、CFP

表.サーキュラーエコノミーと脱炭素との違い

このように見ると、サーキュラーエコノミーは資源循環のテーマ、Scope3は排出量管理のテーマであり、一見すると別の領域に見えるかもしれません。

実際、企業においても、サーキュラーエコノミーは製品設計や資源循環の文脈で議論されることが多い一方、Scope3はサプライチェーン排出量の算定や削減、開示対応の文脈で語られることが一般的です。

しかし実際には、両者は密接に関係しています。例えば、再生材の利用によって新規原材料の調達量を削減したり、製品の長寿命化によって新たな製品製造の機会を減らしたりすることは、資源消費の削減だけでなく温室効果ガス排出量の削減にもつながります。つまり、サーキュラーエコノミー施策は資源循環のための取り組みであると同時に、Scope3排出量削減の有力なアプローチの一つとして捉えることもできます。

では、なぜサーキュラーエコノミーの取り組みがScope3削減につながるのでしょうか。次章では、その関係を見ていきます。

※Scope3については、こちらの記事で解説しています。 → 【What編】Scope3とは?対象範囲・15カテゴリ一覧・算定方法・課題と企業対応をわかりやすく解説

2.なぜサーキュラーエコノミーはScope3削減につながるのか

資源循環の取り組みが排出量削減につながる理由は、多くの温室効果ガス排出が資源のライフサイクル全体で発生しているためです。

では、なぜ資源循環の取り組みが排出量削減につながるのでしょうか。その理由は、多くの温室効果ガス排出が資源のライフサイクル全体で発生しているためです。

例えば、製品を製造するためには、原材料の採掘、素材製造、部品製造、輸送、製品製造、使用、廃棄といった多くの工程を経る必要があります。そして、それぞれの工程でエネルギーが消費され、温室効果ガスが排出されています。つまり、温室効果ガス排出量は製品の製造工程だけで発生しているわけではなく、資源の採掘から廃棄に至るライフサイクル全体で発生しています。

そのため、新規資源の利用を削減できれば、資源採掘や原材料製造に伴う排出量を抑えることができます。また、製品を長く利用することで新たな製品製造の機会を減らすことができれば、製造や輸送に伴う排出量の削減にもつながります。

例えば、サーキュラーエコノミーの代表的な施策として挙げられる、再生材利用、製品の長寿命化、修理・再利用、回収・リサイクルといった取り組みは、いずれも新規資源投入や廃棄物発生を抑えることを目的としています。

その結果として、資源の採掘、製造、輸送、廃棄などに伴う温室効果ガス排出量も削減されます。

図.サーキュラーエコノミー施策がScope3・CFP削減につながる構造

このように、サーキュラーエコノミーは、資源循環に加えて、ライフサイクル全体の排出量削減にも関係します。資源投入量や廃棄物の削減を通じて、企業や製品のライフサイクル全体における排出量削減にも貢献します。

では、こうしたサーキュラーエコノミー施策は、実際にどのScope3カテゴリへ影響するのでしょうか。次章では、代表的なカテゴリとの関係を整理します。

3.サーキュラーエコノミーはどのScope3カテゴリに影響するのか

前章では、サーキュラーエコノミー施策が資源投入量や廃棄物の削減を通じて、排出量削減につながることを説明しました。

では、その影響は具体的にどのScope3カテゴリに現れるのでしょうか。サーキュラーエコノミー施策は特定のカテゴリだけに影響するものではありません。原材料調達から輸送、製品廃棄まで、サプライチェーン全体の排出量削減につながる可能性があります。

特に関係が深いのは、カテゴリ1(購入した製品・サービス)、カテゴリ5(事業から出る廃棄物)、カテゴリ12(販売した製品の廃棄)です。また、施策によってはカテゴリ4・9(輸送・配送)にも影響を与える場合があります。

サーキュラーエコノミー施策主な影響カテゴリ主な理由
再生材利用カテゴリ1新規原材料調達量の削減
長寿命化カテゴリ1・5・12新規製造や廃棄の抑制
再利用・再製造カテゴリ1・5・12新規製造や廃棄の抑制
リサイクルカテゴリ12廃棄物削減・資源循環促進
各種CE施策カテゴリ4・9輸送量・配送量の削減につながる場合がある

表.サーキュラーエコノミー施策とScope3との主な関係

カテゴリ1との関係

再生材利用や再利用・再製造は、新規原材料調達量の削減につながります。そのため、カテゴリ1の排出量削減に寄与する代表的なサーキュラーエコノミー施策といえます。

特に製造業ではカテゴリ1(購入した製品・サービス)がScope3排出量の大部分を占めるケースも多く、サーキュラーエコノミーとScope3との関係を考えるうえで重要なカテゴリです。

※カテゴリ1については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → Scope3カテゴリ1とは|購入した製品・サービスの排出が最大になる理由と算定の難しさ

カテゴリ5・12との関係

長寿命化や再利用・再製造、リサイクルは、廃棄物発生量の削減や資源循環促進につながります。

その結果、事業活動に伴う廃棄物処理(カテゴリ5)や、販売した製品の廃棄(カテゴリ12)に伴う排出量の削減も期待できます。

サーキュラーエコノミーの代表的な施策の多くは、「捨てる量を減らす」ことを通じて排出量削減へ貢献していると考えることができます。

カテゴリ4・9との関係

また、長寿命化や再利用・再製造によって新たな製品や部材の製造・流通が抑制される場合、原材料輸送や製品配送に伴う排出量削減につながる可能性があります。

影響度は業種や製品によって異なりますが、サーキュラーエコノミー施策は原材料調達や廃棄だけでなく、物流に伴う排出量にも影響を与える場合があります。

※カテゴリ4(輸送・配送(上流))・9(輸送・配送(下流))については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → Scope3カテゴリ4・9とは|上流・下流輸送の違いと算定の考え方

このように、サーキュラーエコノミー施策は特定のカテゴリだけに影響するものではありません。原材料調達から物流、廃棄まで、サプライチェーン全体の排出量削減に関係しています。

一方で、サーキュラーエコノミーは企業単位の排出量であるScope3だけでなく、製品単位の排出量管理とも深く関係しています。次章では、サーキュラーエコノミーとCFP(カーボンフットプリント)の関係について整理します。

4.サーキュラーエコノミーとCFPの関係

ここまで、サーキュラーエコノミー施策がScope3排出量削減につながる仕組みや、影響を受ける主なカテゴリについて整理してきました。一方、サーキュラーエコノミーを考えるうえで、もう一つ重要なテーマがCFP(カーボンフットプリント)です。

CFPは、製品の原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄までのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス排出量をCO₂換算で算定・可視化する指標です。

サーキュラーエコノミー施策の多くは、新規資源投入の削減や廃棄物削減につながるため、CFP削減にも寄与すると考えられます。

例えば、再生材利用によって原材料調達に伴う排出量を削減したり、製造ロス削減によって製造工程の排出量を削減したりする取り組みは、CFPにも反映されやすい施策です。

一方で、サーキュラーエコノミー施策とCFPの関係は、必ずしも単純ではありません。

例えば、製品の長寿命化を実現するために耐久性を高めたり、部材を追加したりした場合、「製品単体」で見ると製造時の排出量が増加し、CFPが大きくなるケースもあります。しかし、長寿命化によって製品の買い替え頻度が減れば、社会全体で見た場合には新たな製品製造や原材料投入が抑制され、結果として温室効果ガス排出量削減につながる可能性があります。

つまり、CFPは製品単体の排出量を評価する指標である一方、サーキュラーエコノミーは資源循環や社会全体での資源利用効率向上を目指す取り組みです。そのため、両者は同じ方向を向いているものの、必ずしも同じ尺度で評価できるわけではありません。

近年は、こうした製品やサービスが社会全体の排出量削減にどの程度貢献したかを評価する「削減貢献量(Avoided Emissions)」にも注目が集まっています。長寿命化や再利用、再製造といったサーキュラーエコノミー施策の価値は、製品単体のCFPだけでは評価しきれない場合があり、削減貢献量の考え方とあわせて理解することが重要です。

※CFP(カーボンフットプリント)については、こちらの記事で解説しています。 → カーボンフットプリント(CFP)とは ― 製品のGHG見える化から企業全体の削減へ

※削減貢献量については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 削減貢献量とは WBCSD新版の要点と企業対応

5.サーキュラーエコノミーはScope3・CFP・製品サステナビリティをつなぐ|まとめ

ここまで見てきたように、サーキュラーエコノミー施策は、新規資源投入や廃棄物発生の削減を通じてScope3排出量削減につながります。また、製品ライフサイクル全体で見ればCFPとも関係しますが、長寿命化のように製品単体のCFPだけでは価値を評価しきれない取り組みもあります。

このように整理すると、サーキュラーエコノミーは資源循環のためだけの取り組みではなく、企業の脱炭素戦略や製品サステナビリティ向上にも関係するテーマであることが分かります。

一方で、ESPR(エコデザイン規則)やDPP(デジタルプロダクトパスポート)、欧州電池規則など、製品ライフサイクル全体を対象とした制度整備も進められています。

こうした制度を理解するうえでも、サーキュラーエコノミー、Scope3、CFPを個別のテーマとして捉えるのではなく、相互に関係するものとして理解することが重要です。

※CFP・ESPR・DPP・欧州電池規則など、製品サステナビリティ規制の全体像については、こちらの記事で詳しく解説しています。 → 製品サステナビリティ規制とは?CFP・ESPR・DPP・電池規則の全体像を整理(確認中記事)

※ESPR(エコデザイン規則)については、こちらの記事で解説しています。 → ESPRとは?エコデザイン規則の対象製品・目的・影響を解説

※DPP(デジタルプロダクトパスポート)については、こちらの記事で解説しています。 → DPP:製品の透明性を担保するデジタル製品パスポートとは?

※欧州電池規則については、こちらの記事で解説しています。 → 【最新版】欧州電池規則とは?対象・要件・義務化スケジュール

FAQ

Q1. サーキュラーエコノミーはScope3削減につながりますか?

はい。サーキュラーエコノミー施策は、新規資源投入や廃棄物発生の削減を通じて、Scope3排出量削減につながる可能性があります。

例えば、再生材利用は原材料調達に伴う排出量削減につながり、長寿命化や再利用・再製造は新たな製品製造や廃棄物発生の抑制につながります。その結果、カテゴリ1、カテゴリ5、カテゴリ12などの排出量削減に寄与する場合があります。

Q2. サーキュラーエコノミーと脱炭素の違いは何ですか?

サーキュラーエコノミーは資源循環を目的とする取り組みであり、脱炭素は温室効果ガス排出量削減を目的とする取り組みです。

両者は目的が異なりますが、サーキュラーエコノミー施策によって新規資源投入や廃棄物発生を削減できれば、結果として温室効果ガス排出量削減にもつながるため、実務上は密接に関係しています。

Q3. サーキュラーエコノミー施策を実施するとCFPは必ず削減されますか?

必ずしもそうとは限りません。

例えば製品の長寿命化を実現するために耐久性を向上させた場合、製品単体で見ると製造時の排出量が増加し、CFPが大きくなるケースもあります。

一方で、製品寿命の延長によって買い替え頻度が減れば、社会全体では温室効果ガス排出量削減につながる可能性があります。

Q4. サーキュラーエコノミーと製品サステナビリティ規制はどのような関係がありますか?

近年のESPR(エコデザイン規則)、DPP(デジタルプロダクトパスポート)、欧州電池規則などの製品サステナビリティ規制は、製品ライフサイクル全体の環境負荷低減や資源循環促進を目的として整備が進められています。

そのため、サーキュラーエコノミーは製品サステナビリティ規制を理解するうえで重要な考え方の一つといえます。

出典

経済産業省|サーキュラーエコノミー  https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/shigenjunkan/circular_economy/

環境省|環境再生・資源循環  https://www.env.go.jp/recycle/circul/

経済産業省|カーボンフットプリント  https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/LCA_CFP/LCA_CFP.html

経済産業省|削減貢献量  https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/va/gvc_guideline.html

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