GHGとは?温室効果ガス・GHG排出量・Scope1・2・3の関係をわかりやすく解説

企業の脱炭素対応やサステナビリティ情報開示が進むなか、「GHG」「GHG排出量」「Scope1・2・3」といった言葉を目にする機会が増えています。一方で、「GHGとCO2は何が違うのか」「GHG排出量とScope1・2・3はどのような関係にあるのか」など、それぞれの意味や関係が分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

GHGは温室効果ガスの総称であり、企業のGHG排出量は、GHGプロトコルの考え方に基づきScope1・Scope2・Scope3に区分して整理されます。こうした基本的な関係を理解することは、GHG排出量の算定・管理や削減、気候関連情報の開示に取り組むうえでの出発点となります。

本記事では、GHGの意味や種類、CO2との違い、GHG排出量の考え方を整理したうえで、GHGプロトコルとScope1・2・3、サプライチェーン排出量との関係まで、企業実務の観点からわかりやすく解説します。

1.GHGとは?意味とCO2との違い

GHGとは「Greenhouse Gas(グリーンハウスガス)」の略で、日本語では「温室効果ガス」を意味します。二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロン類など、地球温暖化に影響を与える複数の気体の総称です。

企業の脱炭素やサステナビリティの実務では、「GHG排出量」「GHGプロトコル」「Scope1・2・3」といった文脈で使われます。

GHGとCO2の違い

GHGは温室効果ガス全体の総称であり、CO2はGHGの一種です。

そのため、「CO2排出量」がCO2そのものの排出量を指すのに対し、「GHG排出量」はCO2に加えて、メタンや一酸化二窒素、フロン類なども対象とします。

2.GHG(温室効果ガス)の種類とGHG排出量とは

GHGには複数の種類があり、それぞれ地球温暖化への影響の大きさが異なります。GHGプロトコルでは、下表に示す7種類の温室効果ガスを対象としています。

GHGプロトコルで対象となる7種類の温室効果ガス

種類主な排出源の例
二酸化炭素(CO2)化石燃料の燃焼、工業プロセスなど
メタン(CH4)燃料の燃焼、農業、廃棄物処理など
一酸化二窒素(N2O)燃料の燃焼、農業、工業プロセスなど
ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)冷媒、発泡剤など
パーフルオロカーボン類(PFCs)半導体製造など
六ふっ化硫黄(SF6)電気設備など
三ふっ化窒素(NF3)半導体・液晶製造など

GHG排出量とは

GHG排出量とは、こうした複数の温室効果ガスの排出量を、CO2換算してまとめたものです。CO2排出量が二酸化炭素そのものの排出量を指すのに対し、GHG排出量はCO2を含む複数の温室効果ガスを対象とします。

企業のGHG排出量を把握する際には、それぞれの温室効果ガスを共通の尺度に換算したうえで、全体の排出量として集計します。

CO2e(CO2換算)とは

温室効果ガスは、種類によって地球温暖化への影響の大きさが異なります。そのため、それぞれの排出量に地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)を用いて、CO2を基準とした量に換算します。

このようにCO2換算した量は、CO2e(CO2 equivalent)と表されます。異なる種類の温室効果ガスをCO2換算することで、企業全体のGHG排出量を共通の尺度で集計・比較できるようになります。

3.GHGプロトコルとは

企業のGHG排出量をScope1・Scope2・Scope3に区分して整理する考え方も、GHGプロトコルに基づいています。Scope3まで含めてGHG排出量を把握することで、自社のScope1・2に加え、原材料の調達、物流、製品の使用・廃棄など、サプライチェーン上で発生する幅広い排出を捉えることができます。

省エネ法・温対法とGHGプロトコルは同じではない

日本では、省エネ法に基づくエネルギー使用量の把握・報告や、温対法に基づくGHG排出量の算定・報告に取り組んでいる企業があります。これらの制度で用いるデータや算定方法は、GHGプロトコルに基づくScope1・2の算定に活用できる部分があります。一方で、対象となる組織・排出源の範囲や算定・報告の考え方は同一ではありません。

そのため、温対法に基づいてGHG排出量を算定していることが、そのままGHGプロトコルに基づくScope1・2の算定が完了していることを意味するわけではありません。

省エネ法・温対法とGHGプロトコルの違いや、既存のエネルギー・排出量データをScope1・2算定にどう活用するかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

→ Scope1・Scope2とは?違い・算定方法・必要データをわかりやすく解説

4.GHG排出量とScope1・Scope2・Scope3の関係

企業のGHG排出量は、排出の発生源や企業との関係に応じて、Scope1・Scope2・Scope3の3つに区分されます。それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。

区分内容主な排出例
Scope1自社が所有・支配する排出源からの直接排出ボイラー・炉・社有車の燃料使用、製造工程、冷媒・フロン類の漏えいなど
Scope2他社から購入した電気・熱などの使用に伴う間接排出購入電力、購入した熱・蒸気など
Scope3Scope1・2以外の、バリューチェーンにおける間接排出原材料調達、物流、出張、販売した製品の使用・廃棄など

Scope1とは|自社による直接排出

Scope1とは、自社が所有・支配する排出源から直接発生するGHG排出量です。代表例として、工場のボイラーや社有車での燃料使用、製造工程での排出、空調・冷凍設備などからの冷媒・フロン類の漏えいがあります。

燃料燃焼ではCO2だけでなく、CH4やN2Oが発生する場合もあり、Scope1ではこれらも含めて算定します。

Scope2とは|購入エネルギーによる間接排出

Scope2とは、他社から購入した電気・熱・蒸気などのエネルギーを使用することに伴って発生する間接的なGHG排出量です。たとえば、オフィスや工場で使用する購入電力に伴う排出がScope2に該当します。

Scope2には、電力の排出量を算定する際に複数の考え方があり、実務では適用する基準やデータの確認が必要です。

Scope1・2を含むGHG排出量の算定の基本的な考え方については、次章で解説します。

Scope3とは|サプライチェーン上のその他の間接排出

Scope3とは、Scope1・Scope2以外の、企業のバリューチェーン上で発生する間接的なGHG排出量です。

原材料や製品の調達、物流、出張、従業員の通勤、販売した製品の使用・廃棄など、企業活動の上流・下流にわたる幅広い排出が対象となります。

Scope3は15のカテゴリに分類されており、カテゴリごとに対象となる活動や算定方法が異なります。

Scope3の15カテゴリについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【What編】Scope3とは?対象範囲・15カテゴリ一覧・算定方法・課題と企業対応をわかりやすく解説

サプライチェーン排出量とは?Scope1・2・3との関係

サプライチェーン排出量とは、自社だけでなく、原材料の調達、輸送・配送、製品の使用・廃棄など、事業活動に関わる一連のサプライチェーン全体で発生するGHG排出量を捉える考え方です。

Scope1・Scope2・Scope3を合計したものがサプライチェーン排出量として整理されます。つまり、Scope3とサプライチェーン排出量は同じ意味ではありません。Scope3はサプライチェーン排出量の一部であり、Scope1・2を除いた間接排出を指します。

企業がサプライチェーン排出量を把握することで、自社拠点だけでは見えにくい原材料調達や物流、製品使用などを含め、どこでGHG排出量が大きいのかを把握しやすくなります。こうした把握は、Scope3を含むGHG排出量全体の削減方針を検討するうえでも重要です。

図.Scope1・Scope2・Scope3とサプライチェーン排出量の関係

5.GHG排出量はどのように算定するのか

GHG排出量の算定方法は、対象となる排出源やScopeによって異なりますが、基本的には「活動量」と「排出係数」を用いて算定します。

燃料使用量や電力使用量などの活動量に、それぞれの活動に対応する排出係数を掛けることで、まず各GHGの排出量を求めます。
  各GHGの排出量 = 活動量 × 排出係数

CO2以外の温室効果ガスについては、さらに地球温暖化係数(GWP)を用いてCO2換算します。
  CO2換算排出量 = 各GHGの排出量 × GWP

CO2以外のGHGについて、排出係数が各GHGの排出量を求める値である場合、CO2eへの換算は概念的に「活動量 × 排出係数 × GWP」で整理できます。

なお、使用する排出係数があらかじめCO2換算された値である場合は、GWPがすでに反映されているため、改めてGWPを掛ける必要はありません。

図.GHG排出量(CO2e)の算定の考え方

Scopeによって必要なデータや算定方法は異なる

Scope1・Scope2・Scope3では対象となる排出源が異なるため、算定に必要なデータや使用する排出係数も異なります。

たとえば、Scope1では燃料使用量や冷媒に関するデータ、Scope2では購入した電気・熱などの使用量が必要になります。Scope3では15カテゴリごとに対象となる活動が異なるため、必要なデータや算定方法も異なります。

Scope1・2の具体的な算定方法や必要なデータについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
Scope1・Scope2とは?違い・算定方法・必要データをわかりやすく解説

Scope3の算定方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【What編】Scope3とは?対象範囲・15カテゴリ一覧・算定方法・課題と企業対応をわかりやすく解説

また、GHG排出量を継続的に把握するには、算定方法だけでなく、必要なデータを各拠点や部門、グループ会社などから継続して収集・管理できる仕組みも重要です。
「ESGデータ管理成熟度モデル――開示対応から経営に使えるデータ基盤へ」

6.なぜ企業にGHG排出量の把握が求められるのか

気候変動は、企業にとって単なる環境問題ではありません。気候変動は、自然災害の増加・激甚化に加え、エネルギーをめぐる環境の変化、規制強化、市場や顧客ニーズの変化などを通じて、企業の収益性や競争力、事業継続性に影響を与える経営課題です。一方で、脱炭素社会への移行は、新たな市場や製品・サービス、競争優位を生み出す事業機会にもなり得ます。

企業がこうした気候変動に伴うリスクと機会を把握し、経営判断につなげていくうえで、GHG排出量は重要な管理指標の一つとなります。GHG排出量を把握する目的は、単に数値を算定することではなく、その情報を継続的に管理し、開示や削減施策、サプライチェーンでの取り組みにつなげることにあります。

気候変動に伴うリスクと機会を把握するため

気候変動への対応が進むことで、企業を取り巻く事業環境も変化します。たとえば、炭素価格や規制の強化、エネルギーコストの変化、取引先や顧客からの脱炭素要請などは、事業コストや競争力に影響を与える可能性があります。

一方で、省エネルギーや低炭素製品・サービスへの需要拡大など、脱炭素社会への移行を新たな事業機会として捉えることもできます。自社のGHG排出量や排出構造を把握することは、特に脱炭素社会への移行に伴うリスクや事業機会を検討するための基礎情報の一つとなります。

気候関連情報を管理・開示するため

GHG排出量は、企業が気候関連情報を管理・開示するうえで重要な指標の一つです。重要なのは、開示時期になってGHG排出量を集計するだけではなく、経営課題を管理するための情報として継続的に把握することです。排出量の実績や目標との差異、変化の要因、削減施策の進捗などを管理することで、経営判断や改善活動につなげやすくなります。こうして社内で管理・活用される情報を基に、投資家など社外への開示情報が作られます。

気候関連情報の開示はTCFD提言を通じて広がり、その考え方はISSBのIFRS S2に取り込まれています。日本のSSBJ基準もISSB基準との整合性を踏まえて策定されており、企業にはScope1・Scope2・Scope3のGHG排出量を把握するとともに、その算定範囲や算定方法、目標などを説明できる状態を整えることが重要になります。

SSBJとGHG排出量・Scope3の関係については、こちらの記事で解説しています。
「SSBJ改正で実務はどう変わる?Scope3・海外拠点・算定ルール見直しのポイント」

また、GHGを含むサステナビリティ情報を継続的に収集・管理し、経営に活用する考え方については、こちらの記事で解説しています。
「ESGデータ管理成熟度モデル――開示対応から経営に使えるデータ基盤へ」(リライト予定)

削減目標を設定し、施策につなげるため

GHG排出量をScopeや排出源ごとに把握することで、どこで排出量が大きいのかを確認し、削減すべき領域や施策の優先順位を検討できます。

また、現状の排出量を基準として中長期的な削減目標を設定し、実績との差異を継続的に確認することで、設備更新や省エネルギー、再生可能エネルギーの導入など、具体的な削減施策の検討や見直しにつなげることができます。

こうしたGHG削減目標の代表的な枠組みの一つがSBT(Science Based Targets)です。

GHG削減目標とSBTについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「SBT認定取得の基本 『何を・どのように』を知ろう」

Scope3ではサプライチェーン全体で対応するため

Scope3まで含めてGHG排出量を把握すると、自社だけでなく、原材料の調達、物流、製品の使用・廃棄など、サプライチェーン全体で発生する排出も対象となります。そのため、Scope3の把握や削減は自社だけでは完結しません。サプライヤーなどの取引先から必要なデータを収集し、排出量の大きい領域を把握したうえで、必要に応じて取引先と削減施策を進めることが重要になります。

Scope3が企業経営のテーマとなっている背景については、こちらの記事で解説しています。
「なぜ今、Scope3が企業経営のテーマになっているのか?」

また、サプライヤーとの具体的な連携については、こちらの記事で解説しています。
「【実務編】Scope3削減とは?サプライヤーエンゲージメントの進め方」

7.まとめ

GHGとは、CO2をはじめ、メタンや一酸化二窒素、フロン類などを含む温室効果ガスの総称です。企業のGHG排出量は、複数の温室効果ガスをCO2換算して集計し、GHGプロトコルの考え方に基づいてScope1・Scope2・Scope3に区分して整理します。

Scope1は自社からの直接排出、Scope2は購入した電気・熱などの使用に伴う間接排出、Scope3はそれ以外のバリューチェーン上の間接排出です。さらに、Scope1・Scope2・Scope3を合わせて捉えることで、サプライチェーン全体のGHG排出量を把握できます。

GHG排出量の算定では、活動量と排出係数を用いることが基本となり、CO2以外のGHGについてはGWPを用いてCO2換算します。ただし、Scopeによって対象となる排出源や必要なデータ、算定方法は異なります。

企業にとってGHG排出量を把握することは、単なる算定や開示対応ではありません。気候変動に伴うリスクと機会を把握し、気候関連情報として継続的に管理・開示するとともに、削減目標や施策、Scope3における取引先との連携へつなげていくための出発点となります。

GHGの全体像を理解したうえで、自社の取り組みに応じてScope1・2、Scope3、GHGデータの収集・管理など、それぞれの実務を具体化していくことが重要です。

FAQ

GHGとは何の略ですか?

GHGは「Greenhouse Gas(グリーンハウスガス)」の略です。日本語では「温室効果ガス」を意味し、CO2(二酸化炭素)やCH4(メタン)、N2O(一酸化二窒素)、フロン類などを含む総称です。

GHGと温室効果ガスは同じ意味ですか?

はい。GHGはGreenhouse Gasの略称で、日本語の「温室効果ガス」と基本的に同じ意味です。企業実務では、「GHG排出量」「GHGプロトコル」などの表現で使われることが多くあります。

GHGとCO2の違いは何ですか?

GHGは温室効果ガス全体の総称であり、CO2はGHGの一種です。GHGにはCO2のほか、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、NF3などがあります。

GHG排出量とCO2排出量の違いは何ですか?

CO2排出量は二酸化炭素そのものの排出量を指します。一方、GHG排出量はCO2だけでなく、CH4やN2O、フロン類など複数の温室効果ガスを対象とし、それぞれをCO2換算して集計したものです。

GHG排出量とは何ですか?

GHG排出量とは、企業活動などによって排出される複数の温室効果ガスを、地球温暖化への影響を踏まえてCO2換算し、共通の尺度で表した排出量です。CO2換算した量は「CO2e」と表されます。

Scope1・2・3とは何ですか?

Scope1・Scope2・Scope3は、企業のGHG排出量を排出源との関係によって区分する考え方です。

  • Scope1:自社が所有・支配する排出源からの直接排出
  • Scope2:購入した電気・熱などの使用に伴う間接排出
  • Scope3:Scope1・2以外のバリューチェーンにおける間接排出

Scope1・2・3の違いは何ですか?

大きな違いは、GHGがどこで、どのような企業活動によって排出されるかです。Scope1は自社からの直接排出、Scope2は購入エネルギーに伴う間接排出、Scope3は原材料調達、物流、出張、製品の使用・廃棄など、自社の上流・下流を含むその他の間接排出を対象とします。

Scope1・2・3を合わせて捉えることで、サプライチェーン全体のGHG排出量を把握できます。

GHG排出量はどのように計算しますか?

GHG排出量は、基本的に燃料使用量や電力使用量などの「活動量」に「排出係数」を掛けて各GHGの排出量を算定します。

各GHGの排出量 = 活動量 × 排出係数

CO2以外のGHGについては、さらに地球温暖化係数(GWP)を用いてCO2換算し、CO2eとして集計します。ただし、対象となる排出源やScopeによって必要なデータや算定方法は異なります。

温対法でGHG排出量を算定していれば、Scope1・2も算定済みですか?

必ずしもそうではありません。温対法に基づくGHG排出量の算定で使用しているデータや算定方法は、GHGプロトコルに基づくScope1・2の算定に活用できる部分があります。

一方で、対象となる組織や排出源の範囲、算定・報告の考え方は同一ではありません。そのため、温対法に基づいてGHG排出量を算定していることだけで、GHGプロトコルに基づくScope1・2の算定が完了しているとは限りません。

省エネ法・温対法とGHGプロトコルの違いや、既存データをScope1・2算定に活用する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「Scope1・Scope2とは?違い・算定方法・必要データをわかりやすく解説」

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