ESGデータ管理成熟度モデル――開示対応から経営に使えるデータ基盤へ

※本記事は2026年7月時点の制度・実務動向を前提に整理しています。

SSBJ、CSRD、Scope3、第三者保証への対応が進むなか、企業が収集・管理するサステナビリティ関連データは増え続けています。しかし、開示資料を作成できることと、データを経営に活かせることは同じではありません。

年に一度、各部門や子会社から数値を集め、開示フォーマットへ転記するだけでは、問題が分かった時点ですでに年度が終わっています。必要なのは、開示に使う数値だけではなく、目標との差異、施策の進捗、投資効果、事業リスクまで把握できるデータ基盤です。

本記事では、ESGデータ管理を「開示対応の作業」から「経営基盤」へ進化させるために、企業の現在地を6段階で捉えるESGデータ管理成熟度モデルを提示します。

制度の全体像はSSBJ(サステナビリティ開示基準)とは?を、Scope3の考え方や対象範囲はScope3とは?対象範囲・15カテゴリ一覧・算定方法・課題と企業対応を参照してください。

1. ESGデータ管理は「開示情報を集める作業」ではない

ESGデータというと、Scope1・2・3などのGHG排出量を思い浮かべがちです。しかし、企業が扱うデータはそれだけではありません。対象は、環境、人材・人権、サプライチェーン、リスク、ガバナンスなど、企業活動の幅広い領域に及びます。

領域 主な基礎データの例
Environment エネルギー、GHG、水、廃棄物、資源循環、生物多様性、製品環境情報
Social 人員・人材育成、労働安全、DE&I、人権、サプライヤーの労働・人権情報
Governance 取締役会、リスク管理、コンプライアンス、内部統制、内部通報

外部に報告する項目の把握には、GRIなどの開示体系が役立ちます。一方、社内管理に必要なデータは、開示項目の一覧だけでは設計できません。企業内部では、同じテーマをKPI、目標、施策、投資、事業戦略、リスクと結びつけ、拠点・事業・製品など意思決定に必要な粒度で管理する必要があります。

図1 ESGデータの構造

図の起点は、各部門・拠点・業務システムが保有するESG基礎データです。これを集計・加工して、社内管理データへ変換します。社内管理データは、目標、KPI、施策、投資、リスクなど戦略や資源配分などの経営判断に使われると同時に、その一部がSSBJ、CSRD、GRI、CDPなどの外部開示に利用されます。

つまり、企業が管理すべきなのは「開示に必要なデータ」だけではありません。経営に必要なデータを管理し、その一部を開示へ利用することが基本です。

なお、第三者保証は図の最終工程にありますが、保証対応を最後に考えればよいという意味ではありません。定義、証跡、承認、変更履歴など、保証に耐え得る統制はデータ管理の設計段階から組み込む必要があります。

2. ESGデータ管理成熟度モデルとは

🔒 この記事は会員限定です。

残りのコンテンツを読むには登録が必要です。

記事問い合わせCTA