SSBJ、ESRS-40aとの二重報告負荷を審議 日本企業が見直すべき開示データ設計

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2026年8月31日の第72回会合で、ESRS-40a公開草案へのコメントの方向性を審議しました。ESRS-40aは、CSRDに基づき、EU域内で一定規模の活動を行うEU域外企業グループに求められるサステナビリティ報告基準案です。

日本企業にとって重要なのは、ESRS-40aを単独で読むことではありません。SSBJ基準、ISSB基準、CSRD関連基準にまたがって、同じサステナビリティ情報をどの境界・定義・文脈で使うのかを整理し、制度ごとに重複した収集や承認が発生しない開示データ設計を進めることが求められます。

SSBJがESRS-40a公開草案への対応を審議

今回のSSBJでの審議は、EFRAGによるESRS-40a公開草案への意見募集(2026年7月23日~10月31日)に対応するためのものです。ESRS-40aに基づくサステナビリティ報告は、現行スケジュール上、2028年1月1日以後に開始する事業年度から求められる予定です。EFRAGは、対象となるEU域外企業について、EU域内での売上やEU支店・EU子会社の規模などを踏まえた要件を示しています。

現時点で扱われているのは公開草案への対応であり、SSBJの最終コメントやESRS-40aの最終基準が確定したわけではありません。ただし、対象可能性のある企業は、最終基準を待つだけでなく、既存のSSBJ・ISSB・CSRD対応データとの重複を早期に確認する必要があります。

二重報告で生じる3つの負荷

SSBJ資料では、SSBJ基準を適用する日本企業グループがESRS-40aの対象にもなる場合、二重報告による追加負荷が生じる可能性が示されています。この場合、主な負荷は次の3点です。

第一の負荷は、基準差の把握です。SSBJ資料では、ESRS-40aとSSBJ基準の要求事項が完全には一致しない場合、追加開示の要否や調整の必要性を企業ごとに判断する負荷が生じる可能性が指摘されています。

第二の負荷は、報告境界と混合アプローチの設計です。ESRS-40aでは、グローバルな影響を報告する考え方に加え、一定の条件下でEU関連のインパクトに限定する混合アプローチが論点となっています。どの範囲を対象に、どのデータを集めるかを制度ごとに整理する必要があります。

第三の負荷は、EU法令参照への対応です。EU域外企業である日本企業が、EU法令に基づく用語や概念を理解したうえで開示することには実務上の負担があります。翻訳や用語対応にとどまらず、判断根拠や承認履歴を残すことも保証・監査対応上の論点となります。

制度ごとの別管理が招く実務リスク

また、こうした二重報告の負荷は、制度ごとに開示データを別々に管理することで、さらに大きくなります。SSBJ用、ESRS-40a用、既存の統合報告書用に別々の表計算ファイルや収集依頼を用意すると、同じ情報について異なる値が並立しやすくなります。更新時期、換算方法、組織境界、責任者が揃わなければ、差異の説明に追加工数が生じます。

特に、Scope 1・2・3、気候関連リスク、目標・実績、移行計画などは複数制度で再利用される可能性が高い項目です。元データと制度別の開示値を分け、要求事項との対応関係、変換ロジック、承認、証拠資料を一元的に管理することが重要です。

実務上は、基準ごとにデータを集め直すよりも、共通データを制度別に出し分けられる設計が必要です。

日本企業が今確認すべき4項目

  1. 適用対象の確認:EU域内の売上、子会社、支店等の状況を法務・経理・海外統括で確認する。
  2. 要求事項マッピング:SSBJ、ISSB、現行ESRS、ESRS-40a公開草案の共通項目と差分を整理する。
  3. 報告境界とデータオーナー:項目ごとに対象組織、収集元、責任部門、更新頻度を明確にする。
  4. 保証可能な証跡:算定根拠、判断記録、承認履歴、修正履歴を制度横断で追跡できるようにする。

公開草案段階では要求が変更される可能性があります。したがって、固定的な帳票を作り込むより、要求事項や適用条件の変更に合わせてデータ項目とワークフローを更新できる構造が望まれます。

SLM編集部コメント

今回のSSBJ資料が示すポイントは、二重報告の負荷が単なる「項目数の増加」ではないことです。実務では、同じデータを異なる境界・定義・説明文脈で使い分け、なぜその数値になったかを説明する能力が問われます。

2028年の報告開始まで時間があるように見えても、対象判定、要求差分、グループ内責任、システム改修、保証準備には複数部門の調整が必要です。最終基準の確定前から、共通データモデルと制度別マッピングの棚卸しを進めることが、後の重複作業を抑える現実的な対応になります。

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