EFRAG、一定のEU域外企業向け「ESRS-40a」公開草案を公表 日本企業の対象条件と実務影響
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EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group 欧州財務報告諮問グループ)は2026年7月23日、一定のEU域外企業向け欧州サステナビリティ報告基準「ESRS-40a」の公開草案を公表し、100日間の公開協議を開始しました。意見募集は2026年10月31日までで、最終技術助言は2027年1月に欧州委員会へ提出される予定です。将来のESRS-40aに基づいて作成される最初のサステナビリティ報告書は、2028事業年度を対象とし、2029年に公表される見通しです。
日本に最終親会社を置く企業グループも、EU域内売上高やEU子会社・支店の閾値を満たす場合、グループ単位で人や環境への重大なインパクトを報告する対象となり得ます。保証を見据え、サステナビリティ部門に加え、経理・法務・内部監査・調達・DX/ITを含むデータ収集と統制の設計が重要になります。
EFRAGがESRS-40a公開草案の協議を開始
ESRS-40aは、会計指令第40a条に基づく「一定のEU域外企業向けESRS」の基準案です。従来「N-ESRS(Non-EU ESRS)」や「ESRS-TC(ESRS for third countries)」と呼ばれていた基準で、2026年6月以降は「ESRS-40a」の名称が用いられています。
公開協議後、EFRAGは2027年1月に欧州委員会へ技術助言を提出する予定です。その後、欧州委員会が独自の公開協議を行い、委任法令として基準を採択する流れです。現時点では草案であり、要求事項は最終化の過程で変わる可能性があります。
日本企業も対象になり得る 確認すべき売上高の閾値
対象となるのは、EU市場で大規模な事業活動を行う一定の第三国企業です。主な判定条件は次の通りです。
- EU域内の純売上高が、直近2事業年度の各年度で4億5,000万ユーロを超える
- EU域内に設立された子会社が、前事業年度の純売上高で2億ユーロを超える
- または、該当するEU子会社がない場合に、EU域内に所在する支店が、前事業年度の純売上高で2億ユーロを超える
これらを満たす場合、EU子会社または支店が、日本などEU域外にある最終親会社またはそのグループのサステナビリティ報告書を公表することになります。対象判定では、EU域内売上高、各法人の売上高、資本関係、最終親会社、連結範囲を横断して確認する必要があります。
EU企業向けESRSとの違いは「インパクト中心」
ESRS-40a公開草案は、EU企業向け改訂ESRSと同じ12基準の構成を採用しています。一方、開示の中心は、企業が人や環境に与える重大なインパクトと、その管理方法です。
EU企業向けESRSで扱うリスク、機会、レジリエンス、依存関係、財務的影響に関する開示は、ESRS-40aでは原則として除外されています。EUタクソノミーに関するデータポイントも対象外です。ただし、気候変動、汚染、水、生物多様性、資源利用、人権、労働、消費者、事業行動など幅広いテーマが対象となります。
気候はグローバル、その他はEU関連に絞れる「混合アプローチ」
草案では、気候関連のインパクトはグローバルな範囲で報告します。一方、気候以外のテーマは、企業がEU関連のインパクトを意味のある形で識別できる場合、開示をEU関連に限定できる選択肢があります。
EU関連のインパクトには、EU市場で販売・提供された製品・サービスに起因するものや、EU域内の事業活動に起因するものが含まれます。関連する上流・下流のバリューチェーンでEU域外に生じるインパクトも含み得ます。この選択肢を使うには、EU向け製品、販売チャネル、事業セグメント、サプライチェーンを切り分けられるデータ構造が前提となります。
日本企業に生じる4つの実務課題
対象となる可能性がある日本企業は、制度の最終化を待つだけでなく、少なくとも次の4点を確認する必要があります。
1. 対象判定と報告境界の可視化
EU域内売上高、EU子会社・支店の売上高、資本関係、連結範囲を一つの判定表に整理します。M&Aや組織再編により対象関係が変わる可能性もあるため、財務・法務・海外事業部門を含む更新プロセスが必要です。
2. グループ・バリューチェーンデータの収集
Scope1・2・3を含む気候データに加え、人権、労働、安全、汚染、水、生物多様性などのインパクト情報を、海外子会社やサプライヤーから収集できるかを確認します。混合アプローチを選ぶ場合は、EU関連とそれ以外を切り分けるための製品・地域・取引先データも必要です。
3. 保証を見据えた証跡と内部統制
会計指令第40a条は、サステナビリティ報告書に保証意見を付すことを求めています。報告値だけでなく、データの出所、算定方法、見積り、変更履歴、確認・承認記録、重要性判断の根拠を説明できる状態にする必要があります。
4. SSBJ・ISSB・EU企業向けESRSとの共通化
日本企業では、SSBJ基準、ISSB基準、EU子会社向けESRS、ESRS-40aが並行する可能性があります。制度ごとに別管理すると、定義差、二重集計、証跡の分散が起きやすくなります。共通データを基礎に、基準ごとの報告境界と開示要件へマッピングする設計が求められます。
今後のスケジュール
- 2026年8月中旬:EFRAGが費用便益分析(Cost-Benefit Analysis)を公表予定
- 2026年10月31日:EFRAGへの意見提出期限
- 2027年1月:EFRAGが欧州委員会へ最終技術助言を提出予定
- 2028事業年度:将来のESRS-40aに基づく最初の報告対象年度となる見通し
- 2029年:将来のESRS-40aに基づいて作成される最初のサステナビリティ報告書が公表される見通し
対象条件や開示要求、技術的な提出・デジタル形式は最終化で変更される可能性があります。対象となる可能性がある企業は、適用判定、開示要求の差分分析、データギャップの把握を先行させることが現実的です。
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