英国、UK CBAMの排出量・検証規則を最終化 2026年データ準備が焦点に

英国政府は、UK CBAM(炭素国境調整措置)の排出量算定・検証に関する二次法を最終化しました。

HMRC(英国の税務・関税当局)は9月9日、UK CBAMのPolicy Summaryも更新しました。今回の最終化により、実排出量を使う場合のモニタリング期間、前駆体を含む排出強度の算定、第三者検証、重要性基準など、企業が準備すべきデータ要件がより明確になりました。対象製品を英国へ供給する日本企業では、英国輸入者から製品別排出強度や検証証跡の提供を求められる可能性があります。

UK CBAMの制度概要は、下記の関連記事・ウェビナーで確認できます。本記事では、今回最終化された排出量算定・検証規則と、2026年データ準備への影響を扱います。

排出量・検証規則がSI 2026/995として成立

Carbon Border Adjustment Mechanism (Emissions and Verification) Regulations 2026 は、UK CBAMの排出量算定・検証に関する基本ルールを定める二次法です。英国議会の手続情報では、同規則は2026年9月8日に署名され、9日に下院へ提出されました。異議申立期間は11月13日までで、2027年1月1日に施行される予定です。

UK CBAMの対象は、2027年1月1日以降に英国へ輸入されるアルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄鋼です。登録・申告・納付を行うのは英国側の輸入者で、直近12カ月の対象品輸入額が5万ポンド以上となる場合に対象となります。

これまでドラフトとして示されていた排出量算定・検証の基本枠組みは、実務上、最終ルールとして扱う段階に移りました。一方で、現地訪問の例外などを定める Force of Law Notice はドラフト段階にあり、技術詳細は引き続き確認が必要です。

実排出量を使う場合の算定・検証要件

UK CBAMでは、輸入品に含まれる直接排出量を算定する方法として、実排出量データを使う方法と、政府が公表するデフォルト値(企業の実データではなく、政府が定める標準の排出量)を使う方法が用意されています。

実排出量を使う場合、英国側の納税義務者は、製造者から製品別の検証済み排出強度データを取得します。この排出強度は、原則として1暦年のモニタリング期間に基づき、対象製品の生産に伴う排出量を生産重量で除して算定します。

複雑な製品では、対象となる前駆体(対象製品を作る過程で使われる原材料・中間材)の排出量も加算されます。前駆体を複数の製造設備や報告期間から調達する場合には、加重平均の考え方も用いられます。完成品メーカーだけでなく、原材料・中間材を供給する上流企業にとっても、製造拠点、工程、前駆体、活動量、排出係数をつないで説明できるデータ管理が前提になります。

2027年輸入分は2026年データの準備も論点に

2027年に輸入される対象品については、輸入年である2027年の検証済み排出強度データがある場合、そのデータを使用します。2027年データがまだない場合は、2026年のモニタリング期間に基づく検証済み排出強度データを使用できます。

2028年以降は、輸入年の直前2暦年のうち、最新の検証済み排出強度を使う方法が示されています。また、製品の製造年に対応する検証済み排出強度を使う選択肢もあります。

2026年データの準備は、すべての対象企業に一律に義務づけられるものではありません。デフォルト値を使う選択肢もあります。ただし、2027年当初から実排出量を使い、製品の排出性能を反映させたい企業では、2026年暦年データをUK CBAMに沿って収集・算定し、検証に耐える形で管理しておく意味が出てきます。

第三者検証は現地訪問が原則、重要性基準は5%

実排出量を申告に使う場合、排出強度データは第三者検証の対象になります。検証機関は、対象となる製造活動のスコープについて認定を受けていることに加え、ISO/IEC 17029:2019およびISO 14065:2020に基づく認定を備えていることが条件となります。

検証では、原則として製造設備への現地訪問を行います。現地訪問の例外は、Force of Law Noticeで定められます。検証機関が誤記や不備を確認した場合、製品の排出強度に対する5%の重要性基準に照らして判断する扱いです。

企業側では、算定結果だけでなく、データの取得元、計算過程、前駆体データ、証憑、承認・修正履歴を追跡できる状態にしておくことが実務上の前提になります。

最終化した項目と、なお確認が必要な項目

項目2026年9月11日時点実務上の意味
排出量・検証規則SI 2026/995として成立。2027年1月1日施行予定排出量算定・検証の基本枠組みは確定
Force of Law Notice政府サイト上ではDraft。2027年1月1日に効力発生予定現地訪問の例外など、技術詳細の最終確認が必要
System Boundaries Documentversion 1.00が公表済み対象となる直接排出、製造工程、前駆体の整理に使用
Carbon Pricing Verification Form政府サイト上で公表済みCarbon Price Reliefを主張する場合の確認書類として使用
Default emissions values未公表。制度開始前にNoticeで公表予定実データとデフォルト値の比較は数値公表後に判断
CBAM Rate算定方法は公表済み。Illustrative rateは2026年秋予定正式レートは2027年から四半期ごとに公表
登録・初回申告2027年分は経過措置あり登録は2028年1月31日まで、初回申告・納付は2028年5月31日まで

今後の主な確認項目は以下の3点です。

  • Force of Law Notice最終版(現地訪問の例外など、検証実務の詳細を定める文書)
  • Default emissions values(実排出量データを使わない場合に参照する、政府が定める標準排出量)
  • Illustrative/正式CBAM Rate(UK CBAMの負担額を試算・計算する際に使う単価)

SLM編集部コメント

今回の規則を踏まえると、日本企業側の実務は、制度概要の確認から、英国輸入者に提供できるデータをどこまで準備するかの確認に移ります。

まず確認すべきなのは、自社製品が対象品目に含まれるか、英国向け取引の中で誰が英国側の輸入者になるか、その輸入者が実排出量データを使う方針か、デフォルト値を使う方針かです。実排出量を使う場合は、製品別排出強度、前駆体データ、算定根拠、検証証跡をどの範囲まで提供できるかが論点になります。

2026年データの準備は一律の義務ではありません。ただし、2027年当初から実排出量を使う可能性がある場合は、2026年暦年データについて、取得元、計算過程、承認・修正履歴を後から確認できる形で管理しておくことが現実的な備えになります。

参考資料

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