サステナビリティ第三者保証とは?SSBJ・CSRD対応の全体像と実務ロードマップ
目次
サステナビリティ情報に対する第三者保証は、いまや任意の取り組みから制度対応へと大きく位置づけが変わりつつあります。サステナビリティ情報に対する第三者保証は、いまや企業対応の中心テーマとなりつつあります。
SSBJ(サステナビリティ基準委員会)や金融庁による制度設計の進展、CSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)などの海外規制に加え、日本ではGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に連動した動きも進んでおり、企業には非財務情報の信頼性を担保する仕組みが求められています。
一方で、実務の現場では次のような課題も多く聞かれます。
- 第三者保証とは何か、どこまで対応すべきか分からない
- どの制度に対応すればよいのか、整理できていない
- 内部統制やデータ整備をどこまで準備すべきか、判断できない
こうした背景から、第三者保証は「制度対応の一部」ではなく、企業のガバナンスやデータ基盤そのものを問うテーマへと変化しています。
本記事では、第三者保証の基本的な考え方から、SSBJ・CSRDやGX-ETSなどの制度動向、そして企業に求められる実務対応までを体系的に整理します。あわせて、企業単位の開示対応に加え、製品単位(CFP)における保証の広がりについても解説します。
あわせて、内部統制の整備や体制構築、さらには合理的保証への移行といった今後の論点についても解説します。
1.サステナビリティ第三者保証とは
第三者保証とは、企業が開示するサステナビリティ情報やGHG排出量について、その内容が適切に算定・報告されているかを、独立した第三者が評価・検証するプロセスです。
対象となる情報は、Scope1・2・3の温室効果ガス(GHG)排出量に加え、気候関連情報、人的資本、ガバナンス情報など多岐にわたります。これらの情報は企業価値や投資判断に直接影響するため、その信頼性を担保する仕組みとして第三者保証の重要性が高まっています。
第三者保証は、主に以下の原則に基づいて実施されます。
- 独立性(客観性):保証機関は企業から独立した立場で評価を行う
- 透明性:保証のプロセスや結果が明確に開示される
- 一貫性:一定の基準・手法に基づいて評価が行われる
また、保証のレベルには「限定的保証(Limited Assurance)」と「合理的保証(Reasonable Assurance)」があり、制度導入初期は限定的保証が主流とされる一方、将来的には合理的保証への移行が想定されています。
第三者保証の対象は「企業単位」と「製品単位」に広がっている
第三者保証の対象は、企業全体の排出量やサステナビリティ情報に限られません。近年では、製品やサービス単位での環境情報に対する保証も広がっています。
大きく分けると、以下の2つの軸があります。
- 企業単位の保証 Scope1・2・3のGHG排出量やサステナビリティ情報全体を対象とした保証。SSBJやCSRDなどの開示制度と強く関連します。
- 製品単位の保証(CFP:カーボンフットプリント) 製品1単位あたりの排出量を対象とした保証。CBAMや欧州電池規則など、製品単位の規制と密接に関係します。
これらは対立するものではなく、企業単位の排出量管理と、製品単位の環境情報の精緻化が連動して進む構造にあります。
今後は、企業単位の開示対応に加え、製品単位での保証対応も求められるケースが増えていくと考えられます。
※製品単位の排出量(CFP)の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
→ カーボンフットプリント(CFP)とは?算定方法・計算例・Scope3・LCAとの違いと企業対応【2026年最新版】
2.なぜ第三者保証が必要か
サステナビリティ情報やGHG排出量は、企業のリスク評価や企業価値の判断に直結する重要な情報です。しかし、これらは財務情報とは異なり、算定方法やデータ収集プロセスが企業ごとに異なるため、そのままでは信頼性にばらつきが生じやすいという課題があります。
近年では、サステナビリティ情報に対する第三者保証を導入する企業は増加しており、グローバル企業の多くが何らかの保証を取得しています。こうした普及の進展も、保証の必要性を高める要因となっています。
こうした背景から、開示情報の信頼性を担保する仕組みとして第三者保証の必要性が高まっています。
第三者保証が求められる理由は、大きく以下の4つに整理できます。
- ステークホルダーからの信頼確保
- サステナビリティウォッシュへの対応
- 制度化の進展への対応
- 企業内部の管理高度化
以下、それぞれについて整理します。
1) ステークホルダーからの信頼確保
近年、投資家は企業の財務情報だけでなく、気候変動対応や人的資本といった非財務情報も重視するようになっています。一方で、これらの情報に誤りや恣意性が含まれていた場合、投資判断を誤らせるリスクがあります。
第三者保証を受けることで、開示情報の客観性と信頼性が担保され、投資家・金融機関・取引先などのステークホルダーからの信頼向上につながります。
2) サステナビリティウォッシュへの対応
企業のサステナビリティ情報に対する関心が高まる一方で、実態以上に環境配慮をアピールする「サステナビリティウォッシュ(グリーンウォッシュ)」への懸念も強まっています。
第三者保証は、こうしたリスクを抑制し、企業が開示する情報の正確性・妥当性を第三者の視点で検証する仕組みとして機能します。
3) 制度化の進展への対応(SSBJ・CSRD・GX-ETS)
第三者保証の必要性は、制度面からも急速に高まっています。
- SSBJ(日本):非財務情報の開示とあわせて保証制度の導入予定
- CSRD(EU):サステナビリティ情報への保証を義務化(段階的に強化)
- GX-ETS(日本):排出量データの信頼性確保が取引・評価の前提
このように、第三者保証は任意対応から制度対応へと移行しつつあるテーマとなっています。
4) 企業内部の管理高度化(副次的価値)
第三者保証は、単なる外部評価にとどまらず、企業内部の管理にも重要な価値をもたらします。
- データ収集・算定プロセスの見直し
- 内部統制やガバナンスの強化
- 課題の可視化と改善サイクルの確立
保証対応を通じて、企業は自社のデータ基盤や業務プロセスの成熟度を高めることができ、結果としてサステナビリティ経営の高度化につながります。
このように、第三者保証は単なる“開示のオプション”ではなく、企業の信頼性を支えるインフラへと位置づけが変化しています。
今後は、「保証を取得するかどうか」ではなく、「保証に耐えうる情報・体制を持っているか」が問われる時代になっていくと考えられます。
3.第三者保証のプロセス
第三者保証は、単に結果を評価するものではなく、企業が作成したデータや算定プロセス全体を対象として、その妥当性を段階的に検証していくプロセスです。
一般的に、第三者保証は以下のステップで進められます。
① 事前評価(計画・リスク評価)
まず、保証機関は企業の開示内容や算定方法、内部統制の状況を把握し、保証業務の計画を策定します。
この段階では主に以下が確認されます。
- 対象範囲(Scope1・2・3、対象拠点など)
- 適用基準(GHGプロトコル、ISO、ISAEなど)
- データ収集・算定プロセス
- 内部統制の整備状況
- リスクの高い領域(誤りが発生しやすい箇所)
この事前評価によって、どこを重点的に検証するかが決まります。
② 検証手続き(データ・プロセスの確認)
次に、実際のデータや業務プロセスに対する検証が行われます。いわゆる「往査(現地確認)」や証憑確認がこの段階に含まれます。
主な手続きは以下の通りです。
- データのサンプリング検証
- 活動量・排出係数の妥当性確認
- 証憑(請求書・計測データ等)との突合
- 拠点へのヒアリング・現地確認
- 異常値や不整合の分析
ここでは、「数字が合っているか」だけでなく、「その数字がどう作られたか」まで確認されます。
③ 評価・結論(保証報告)
検証結果をもとに、保証機関は最終的な評価を行い、保証報告書を作成します。
保証報告では主に以下が示されます。
- 保証の対象範囲
- 適用した基準
- 実施した手続きの概要
- 保証レベル(限定的/合理的)
- 結論(重要な虚偽表示がないか 等)
この報告書により、開示情報の信頼性が外部に示されます。
④ 改善フィードバック(実務上は重要)
制度上は必須ではありませんが、多くの場合、保証プロセスの中で企業に対する改善指摘や助言が行われます。
- データ収集プロセスの不備
- 内部統制の弱点
- 算定方法の改善余地
これらを踏まえて改善を行うことで、次年度以降の保証対応がスムーズになり、データ精度や業務効率の向上につながります。
第三者保証は「継続的な改善プロセス」
このように、第三者保証は一度きりのチェックではなく、毎年の開示・検証・改善を繰り返す継続的なプロセスです。
そのため、単発対応ではなく、
- データ管理の仕組み化
- 内部統制の整備
- 体制構築
といった中長期的な視点での対応が重要になります。
4.第三者保証の主な基準
第三者保証は、各企業が独自に判断して行うものではなく、国際的に定められた基準に基づいて実施されます。これにより、保証の手続きや評価方法に一貫性が担保され、開示情報の比較可能性と信頼性が確保されます。
代表的な基準には、以下のようなものがあります。
■ ISAE 3410(GHG保証の国際基準)
ISAE 3410は、温室効果ガス(GHG)排出量に関する保証業務のための国際基準であり、監査法人などが実施する保証の多くで採用されています。
主な特徴は以下の通りです。
- GHG排出量(Scope1・2・3)や削減量が対象
- 「限定的保証」と「合理的保証」の区分を明確化
- リスク評価に基づく検証手続き
- 保証報告書の構成や記載内容を規定
特に、SSBJやCSRDといった制度対応においては、ISAE 3410をベースとした保証が主流となる可能性が高いと考えられます。
■ ISO 14064-3(GHG検証・検査の国際規格)
ISO 14064-3は、GHG排出量の検証および検査に関する国際規格であり、環境分野における第三者検証で広く用いられています。
主なポイントは以下の通りです。
- 検証(verification)と検査(validation)の区分
- データの信頼性・透明性の確保を重視
- リスク評価・サンプリングに基づく検証プロセス
- 組織単位・プロジェクト単位の双方に対応
GX-ETSなどの排出量検証や、環境規制対応において活用されるケースが多い基準です。
■ AA1000AS(サステナビリティ保証基準)
AA1000ASは、ESG・サステナビリティ情報全般を対象とした保証基準であり、財務監査とは異なる視点からの保証を提供します。
特徴は以下の通りです。
- 「包括性・重要性・応答性・影響度」の原則に基づく評価
- 定量データだけでなく、定性的情報も対象
- ステークホルダーとの関係性を重視
- Type1 / Type2による保証レベルの区分
サステナビリティ報告全体を対象とする場合に適用されることが多く、非財務情報全体の保証に適した基準です。
■ ISSA 5000(サステナビリティ保証の包括基準)
現在、IAASBにより策定が進められている「ISSA 5000」は、サステナビリティ情報全体を対象とした包括的な保証基準です。
従来のISAE 3000やISAE 3410が個別領域に対応していたのに対し、ISSA 5000はESG全体を対象とし、今後のサステナビリティ保証の標準となることが想定されています。
今後のサステナビリティ保証の中核基準となることが想定されています。
■ その他関連基準(CFP・カーボンニュートラル等)
近年は、製品単位の環境情報に関する保証も拡大しており、以下のような基準も重要性を増しています。
- ISO 14067:製品のカーボンフットプリント(CFP)
- PAS 2060:カーボンニュートラルの検証
- ISO 14069:GHG排出量の算定ガイドライン
これらは、CBAMや欧州電池規則など、製品単位の規制対応と密接に関係する基準です。
■ 基準の違いをどう理解すべきか
これらの基準は対象や目的が異なりますが、実務上は以下のように整理すると理解しやすくなります。
- ISAE 3410:監査・保証(開示対応の中心)
- ISO 14064-3:環境データの検証(制度・取引対応)
- AA1000AS:サステナビリティ全体の保証
- ISO 14067等:製品単位(CFP)の保証
- ISSA5000:今後のサステナビリティ保証の中核となることが想定される基準
企業は、自社の開示内容や対象範囲に応じて、適切な基準を組み合わせて対応していく必要があります。
| 基準 | 対象 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ISAE 3410 | GHG | 監査ベース | 開示保証(SSBJ/CSRD) |
| ISO 14064-3 | GHG | 環境規格 | 検証・制度対応(GX-ETS) |
| AA1000AS | ESG全体 | 原則ベース | サステナビリティ報告 |
| ISO 14067 | CFP | 製品単位 | CBAM・電池規則 |
| ISSA 5000 | ESG全体 | 包括基準 | 今後の中核基準となる(想定) |
5.サステナビリティ第三者保証の制度動向(SSBJ・CSRD・GX-ETS)
第三者保証の必要性は、単なる企業の自主的な取り組みにとどまらず、各国の制度や規制の進展によって急速に高まっています。 特に近年は、サステナビリティ情報の開示制度と連動する形で、保証の導入・義務化が進んでいます。
ここでは、日本および海外の主要な制度動向を整理します。
■ SSBJ・金融庁(日本)|開示制度と保証の一体化
日本では、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)により策定された開示基準と、金融庁による制度設計が連動しています。SSBJは、ISSB(IFRS S1・S2)と整合した開示基準となっており、有価証券報告書などの法定開示への統合が進んでいます。
これと連動して、金融庁は第三者保証の導入について、開示基準の適用義務化の開始時期の翌年から限定的保証を義務付ける方針を示しています。
また、保証の対象については、以下のような拡張が想定されています。
- 初期(保証制度の適用開始時期から2年間):Scope1・2、ガバナンス及びリスク管理
- 将来(保証制度の適用開始時期から3年目以降):国際動向等を踏まえ検討(Scope3を含むサプライチェーン全体や気候関連情報以外のサステナビリティ情報(人的資本等)など)
特にScope3算定においては、サプライヤーから取得する一次データの信頼性確保(=保証)が将来を見据えた重要ポイントといえます。
■ CSRD(EU)|揺れ動きながらも着実に進む制度化
EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)も~~は、~~第三者保証の義務化を明確に打ち出している代表的な制度です。
CSRDでは、企業に対してサステナビリティ情報の開示を義務付けるとともに、その情報に対する限定的保証をも求めています。
現時点で制度詳細が全て確定しているわけではありませんが、近い将来を見据え、グローバルでデータガバナンスに取り組んでおくことが重要です。
■ GX-ETS(日本)|排出量取引と検証の関係
日本では、2026年度から本格稼働が始まった排出量取引制度(GX-ETS)で検証が必要となっています。
GX-ETSにおいては、企業が報告するGHG排出量が取引や目標達成の評価に直接影響するため、その信頼性確保が不可欠となります。このため、排出量データに対する第三者検証(verification)の重要性が高まっています。
特に以下の場面で検証が求められます。
- 排出量削減目標の達成状況の確認
- クレジットの創出・取引
- 排出量データの報告
GX-ETSは、開示制度とは異なり、「取引・評価の前提としての保証」という位置づけであり、第三者保証の実務的な必要性を高める制度といえます。
■ CBAM・欧州電池規則|製品単位保証(CFP)の拡大
第三者保証は、企業単位だけでなく、製品単位にも広がっています。
EUの炭素国境調整措置(CBAM)では、対象製品のGHG排出量の報告が求められ、本格適用後は第三者検証も必要となります。また、欧州電池規則では、電池のカーボンフットプリント(CFP)の開示と検証が義務化される見込みです。
これらの制度は、製品単位の環境情報に対する保証の重要性を高める動きであり、サプライチェーン全体への影響も大きいと考えられます。
■ 制度を超えて広がる「保証ニーズ」
第三者保証は制度対応にとどまらず、実務や評価の観点でも重要性が高まっています。
- Scope3(特にカテゴリ1)において、サプライヤーから取得する一次データに対する保証ニーズの増加
- FTSE、CDPなどのサステナビリティ評価において、保証の有無が評価に影響
このように、第三者保証は制度対応に加え、企業評価やサプライチェーン管理の観点でも重要な要素となりつつあります。
■ 第三者保証は「制度横断テーマ」へ
このように、第三者保証は特定の制度に限定されるものではなく、
- 開示制度(SSBJ・CSRD)
- 取引制度(GX-ETS)
- 製品規制(CBAM・電池規則)
- サプライチェーン・評価(Scope3・CDP等)
といった複数の領域にまたがるテーマとなっています。
そのため企業は、個別制度ごとに対応するのではなく、共通のデータ基盤・内部統制・体制を整備することで横断的に対応することが求められます。
日本においては「開示+保証」が一体で進む点が重要です。
6.企業に求められる第三者保証対応(実務の全体像)
これまで見てきた通り、第三者保証は制度対応としてだけでなく、企業のデータ基盤やガバナンス全体に関わるテーマへと広がっています。
そのため、個別に対応するのではなく、全体像を踏まえて段階的に対応を進めることが重要です。
第三者保証対応は、大きく以下のステップに整理できます。
① 実務課題の把握(どこに問題があるか)
まず重要なのは、自社の現状における課題を把握することです。
多くの企業では、以下のような課題が見られます。
- データ収集が属人的で統一されていない
- サプライチェーン(Scope3)のデータ精度が低い
- 拠点ごとに算定方法が異なる
- 保証対応に必要な証憑管理が不十分
こうした課題を整理することが、すべての出発点となります。
※第三者保証における具体的な課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
→ SSBJ・CSRDに必須なサステナビリティ第三者保証 ~実務上の課題~
② 前提整備(内部統制・データ基盤の構築)
次に必要となるのが、保証に耐えうるデータ基盤と内部統制の整備です。
具体的には以下のような対応が求められます。
- データ収集プロセスの標準化
- 入力・承認フローの整備
- 証憑の管理・トレーサビリティ確保
- 異常値チェックやルール整備
この段階が不十分だと、保証対応の負荷が大きくなり、コストや工数が増大します。
※内部統制やデータ整備の考え方については、以下の記事で整理しています。
→ SSBJ対応における第三者保証の前提となる内部統制と情報整備の考え方
③ 体制構築(ガバナンスと運用設計)
内部統制の整備と並行して、保証対応を支える体制構築も重要です。
- 担当部門・責任範囲の明確化
- グループ会社・海外拠点との連携
- 外部保証機関とのコミュニケーション設計
- ITシステムの導入・活用
特に、Scope3やグローバル対応を見据える場合、組織横断的な体制構築が不可欠となります。
※具体的な体制設計については、以下の記事で解説しています。
→ サステナビリティ開示における第三者保証とは?SSBJ対応と体制設計
④ 高度化対応(合理的保証・対象拡大への備え)
制度の進展に伴い、今後は保証の高度化が求められます。
- 人的資本など非財務情報全体への対象拡大
- 製品単位(CFP)への対応
- データ粒度・精度の向上
このフェーズでは、単なる対応ではなく、経営基盤としてのデータ整備が問われる段階に入ります。
※高度化対応の具体論については、以下の記事で詳しく解説しています。
→SSBJ・CSRD対応における第三者保証の実務論点と対応格差
第三者保証対応は「段階的に進める」ことが重要
第三者保証対応は、一度にすべてを整備するものではなく、
- 課題把握
- 前提整備
- 体制構築
- 高度化
というステップを踏みながら進めていくものです。
制度対応に追われるのではなく、中長期的に「保証に耐えうる企業体質」を構築する視点が重要です。
7.まとめ
サステナビリティ情報に対する第三者保証は、これまでの任意対応から、制度対応・経営基盤へとその位置づけを大きく変えつつあります。
本記事では、第三者保証の基本的な考え方から、主要な保証基準、SSBJ・CSRD・GX-ETSなどの制度動向、そして企業に求められる実務対応までを整理しました。
重要なポイントは以下の通りです。
- 第三者保証は、開示情報の信頼性を担保する仕組みである
- 制度化(SSBJ・CSRD)により、保証は今後ますます重要になる
- GX-ETSやCFPなど、取引・製品領域にも保証が広がっている
- Scope3やサプライチェーン対応により、データ精度の重要性が高まっている
- 対応は「課題把握 → 前提整備 → 体制構築 → 高度化」で段階的に進める必要がある
今後は、「保証を取得するかどうか」ではなく、「保証に耐えうるデータ・体制を構築できているか」が企業に問われる時代になります。
制度対応にとどまらず、サステナビリティ経営の基盤として第三者保証を捉え、長期的な視点で対応を進めていくことが重要です。
FAQ
Q. 第三者保証とは何ですか?
A. 第三者保証とは、企業が開示するサステナビリティ情報やGHG排出量について、その内容が適切に算定・報告されているかを独立した第三者が検証するプロセスです。保証は、単なるチェックではなく、データの収集方法や内部統制、算定ロジックまで含めて評価されます。
対象はScope1・2の排出量に加え、気候関連情報や人的資本などESG全体へと広がっています。制度化の進展により、企業にとって重要な経営インフラの一つとなりつつあります。
Q. 第三者保証は義務ですか?
A. 日本においては、金融庁の方針として、時価総額1兆円以上の企業はSSBJ開示基準の適用義務化の開始時期の翌年から限定的保証が義務付けられます。時価総額5000億円以上の企業も将来的に対象になる可能性は高く、準備が重要です。
Q. 限定的保証と合理的保証の違いは何ですか?
A. 限定的保証は、「重要な誤りがないか」を中心に確認する比較的軽い保証であり、主に分析手続きやヒアリングをベースに実施されます。一方、合理的保証は、財務監査に近いレベルで詳細な検証を行い、高い確度で情報の正確性を保証するものです。
制度導入初期は限定的保証が主流ですが、将来的には合理的保証への移行が想定されています。そのため企業は、初期段階から合理的保証を見据えた体制整備が求められます。
Q. 第三者保証の対象は何ですか?
A. 主な対象は、Scope1・2~~・3~~のGHG排出量や気候関連情報ですが、近年は人的資本やガバナンス情報など、サステナビリティ情報全体へと拡大しています。さらに、企業単位だけでなく、製品単位の排出量(CFP)に対する保証も広がっています。
SSBJやCSRDでは、こうした情報を段階的に保証対象に含める方向で議論されています。企業は、自社の開示範囲に応じて保証対象を整理する必要があります。
Q. Scope3にも第三者保証は必要ですか?
A. 今後はScope3を含めたサプライチェーン全体での保証が求められる方向にあります。特にカテゴリ1(購入した製品・サービス)では、サプライヤーから取得する一次データの信頼性が重要な論点となっています。
そのため、単なる推計値ではなく、実測データや保証付きデータの活用が求められるケースが増えています。これはサプライチェーン全体でのデータ管理高度化にもつながります。
Q. GX-ETSでは第三者保証が必要ですか?
A. GX-ETSでは、企業が報告するGHG排出量の正確性を確保するために、第三者による検証(verification)が重要な役割を果たします。
これは、SSBJやCSRDにおける「第三者保証(assurance)」とは厳密には異なり、排出量データが制度要件に適合しているかを確認する手続きです。
GX-ETSにおいては、排出量データが取引や目標達成の評価に直接影響するため、データの信頼性が極めて重要になります。そのため実務上は、保証に近いレベルでのデータ精度・内部統制が求められるケースも多くなっています。
制度上は「検証」であっても、企業側の対応としては、第三者保証を見据えたデータ管理が求められる点が重要です。
Q. CFP(カーボンフットプリント)にも保証は必要ですか?
A. はい。近年は製品単位の排出量(CFP)に対する第三者検証が拡大しています。
CBAMや欧州電池規則などでは、製品の排出量データに対する検証が求められるケースが増えています。これにより、製造業を中心にサプライチェーン全体でのデータ精度向上が必要になります。
企業単位の保証とあわせて対応することが重要です。
Q. 第三者保証の主な基準は何ですか?
A. 代表的な基準には、ISAE 3410(GHG保証)、ISO 14064-3(検証)、AA1000AS(サステナビリティ保証)などがあります。また、今後はISSA 5000がサステナビリティ保証の包括基準として主流になる可能性があります。
企業は、対象情報や制度要件に応じて、適切な基準を選択・組み合わせる必要があります。基準の理解は保証対応の前提となります。
Q. 第三者保証に対応するには何から始めるべきですか?
A. まずは、自社のデータ管理や内部統制の現状を把握し、課題を整理することが重要です。そのうえで、データ収集プロセスの標準化や証憑管理の整備、体制構築を段階的に進めます。
いきなり保証を取得するのではなく、事前準備を進めることで対応負荷を抑えることができます。段階的な対応が成功のポイントです。
Q. 第三者保証は企業にどんなメリットがありますか?
A. 第三者保証を受けることで、開示情報の信頼性が向上し、投資家や取引先からの評価が高まります。また、保証プロセスを通じてデータ管理や内部統制の課題が明確になり、業務改善につながります。
さらに、将来的な制度対応への備えとしても有効です。単なるコストではなく、経営基盤強化の機会と捉えることが重要です。
参照
- SSBJ(サステナビリティ基準委員会)https://www.ssb-j.jp/jp/
- 経済産業省|GXリーグ・排出量取引制度(GX-ETS)https://gx-league.go.jp/action/gxets/
- Directive (EU) 2022/2464(CSRD) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32022L2464
- IAASB(保証基準・ISSA含む)|ISSA5000 Understanding the International Standard on Sustainability Assurance 5000 | IAASB
- ISO 14064(GHG)https://www.iso.org/standard/66453.html
- AA1000AS https://www.accountability.org/standards/aa1000-assurance-standard/




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