カーボンフットプリント(CFP)とは?算定方法・Scope3との違い・企業対応をわかりやすく解説

カーボンフットプリント(CFP)とは、製品1単位あたりのCO₂排出量をライフサイクル全体で算定する指標です。 近年、企業の脱炭素対応は、企業単位の排出量管理(Scope1・2・3)から、製品単位の排出量把握へと拡張しています。

欧州電池規則(EU電池規則)、エコデザイン規則(ESPR)、炭素国境調整メカニズム(CBAM)など、主要な制度はすべて「製品単位排出量」を前提に設計されており、調達・設計・開示の現場で対応が求められています。

一方で実務では、

  • CFPとScope3は何が違うのか?
  • LCAとの関係はどう整理すべきか?
  • 実際の算定はどのように進めるのか?

といった疑問も多くみられます。

CFPは単なる環境指標ではなく、製品単位で排出構造を可視化し、削減の優先順位を明確にするための実務基盤です。

本記事では、CFPの基本概念から、Scope1・2・3との違い、LCAとの関係、算定方法、ISO14067、規制動向までを体系的に整理します。

※CFP算定の具体的な手順やデータ収集・配分の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

→ 【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

1. カーボンフットプリント(CFP)とは?意味・定義をわかりやすく解説

カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービス1単位あたりの温室効果ガス排出量を、ライフサイクル全体でCO₂換算(kg-CO₂e)して算定する指標です。

「その製品が一生でどれだけCO₂を排出するか」を数値化したものと考えると理解しやすいでしょう。

CFPは製品単位の排出量を示す指標であり、企業単位の排出量(Scope1・2・3)とは対象が異なります

対象となる工程は、原材料調達、製造、流通、使用、廃棄・リサイクルなどライフサイクル全体に及びます。

【ライフサイクルとシステム境界の概念図】

出典:カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省・環境省)

ただし、実際の算定では、算定目的によって算定対象工程は異なります。その範囲を定めるのが「システム境界」です。

同じ製品であっても、出荷までを対象とするか(Cradle-to-Gate)、廃棄まで含めるか(Cradle-to-Grave)、といった算定範囲(システム境界)によって数値は変わります。

CFPは単なる数字ではなく、どの境界・前提で算定されたかを含めて理解すべき指標です。

2. なぜCFPが重要なのか?

CFPが重要とされる理由は、企業単位の排出量管理では「どこを削減すべきか」が見えにくいことにあります。

企業単位で排出量を把握するScope1・2・3では、排出の総量は把握できますが、どの製品・どの工程に削減余地があるのかまでは明確になりません。その結果、製造工程の改善に投資すべきか、原材料を見直すべきか、サプライヤーを変更すべきかといった意思決定が難しくなります。

ここで重要になるのが、製品単位で排出構造を把握する視点です。CFPを用いることで、「どの工程で排出が多いか」、つまり削減の優先順位が明確になります

こうした背景の中で、規制やサプライチェーンの動きも変化しています。欧州電池規則やCBAMなどでは、製品ごとの排出量把握が前提となっており、調達においても製品単位のデータ提供が求められるケースが増えています。

つまり現在は、企業(組織)と製品の両方で排出量を管理する二層構造が、脱炭素実務の前提になりつつあります。

CFPは、この製品単位の排出構造を可視化し、設計・調達・開示といった意思決定につなげるための基盤です。

3. CFPとScope3・LCAの違いとは?関係性を整理

CFP、Scope1・2・3、LCAはいずれも温室効果ガス排出量や環境負荷を扱う概念ですが、対象と役割が異なります。これらは対立するものではなく、実務では役割の異なるレイヤーとして組み合わせて使われます。

CFPとScope1・2・3の違い

Scope1・2・3は、企業(組織)単位で排出量を把握・管理するための枠組みです。一方でCFPは、製品単位で排出量を分解し、排出構造を可視化する指標です。

  • Scope:企業全体を把握する
  • CFP:製品ごとに分解する

このため、Scopeでは排出の総量は把握できますが、

  • どの製品が排出の多くを占めているのか
  • どの工程を優先的に改善すべきか

といった判断は難しく、削減の意思決定にはCFPが不可欠になります。

CFPとLCAの違い

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品のライフサイクル全体における環境影響を評価する「手法」です。一方でCFPは、そのLCAの枠組みを用いて温室効果ガス排出量に特化して評価した「指標」です。

  • LCA:環境影響を評価する手法
  • CFP:その結果としての排出量指標

つまり、CFPはLCAの考え方をベースにしたアウトプットといえます。

CFP、LCA、Scope1・2・3の関係性(全体像)

Scope も含めてまとめると、次のように整理できます。

  • LCA:評価手法(ベース)
  • CFP:製品単位の排出量(結果)
  • Scope1・2・3:企業単位の排出量管理

つまり、LCAで算定したCFPが、Scope3(サプライチェーン排出量)の精緻化にも活用されるという位置づけになります。

※「結局、Scope3とCFP、LCAとCFPは何が違うのか?」をもう一段わかりやすく整理したい方は、こちらで図解付きで解説しています。

Scope3・CFP・LCAの違いとは?関係性・使い分けをわかりやすく整理

4. CFPは義務化される?国内外の規制動向

欧州電池規則では、一定容量以上の電池に対しCFP申告が義務付けられています。CBAMも製品単位情報を前提としています。

日本では経済産業省がCFP算定ガイドラインを公表しており、公共調達の場面で環境情報提示が求められるケースもあります。

CFPは一律義務ではありませんが、制度設計上の前提インフラになりつつあります。

※欧州電池規則について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください

→ 欧州電池規則

※CBAMについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください

→ EUによる炭素国境調整措置(CBAM)とは? 日本企業への影響を分かりやすく解説

5. CFPの算定方法|計算手順と必要データ

CFP算定は、LCAの国際規格ISO14040/44に基づいており、その温室効果ガス排出量に特化した規格がISO14067です。

算定は次の流れで進みます。

Step 1. 算定方針の検討(算定目的の明確化、算定方法の具体化)

Step 2. 算定範囲の設定(機能単位、システム境界の設定)

Step 3. CFPの算定(データ収集、排出量計算)

Step 4. 検証・結果の報告

【CFP算定の手順】

出典:カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省・環境省)

データには、自社の実測値(一次データ)と、排出係数データベース(二次データ)があります。日本ではAIST-IDEA、国際的にはecoinventが代表的です。

CFPは計算作業ではなく、「どの工程を含め、どのデータを使うか」という設計判断の積み重ねです。

6. CFPの具体的な算出方法【計算例あり】

アルミ部品の例で考えます。

仮に、原材料アルミの排出係数が8kg-CO₂e/kg、製造工程で使用する電力が5kWh、電力排出係数が0.4kg-CO₂e/kWh、部品重量が2kgとすると、

原材料由来:2kg x 8kg-CO₂e/kg = 16kg-CO₂e

製造工程由来:5kWh x 0.4kg-CO₂e/kWh = 2kg-CO₂e

合計:16kg-CO₂e + 2kg-CO₂e = 18kg-CO₂e(Cradle-to-Gate)

となります(原料輸送、製造時の廃棄物処理等は除く)。

もし、アルミ部品の使用段階や廃棄段階まで含めれば(Cradle-to-Grave)、数値は変わります。

この例が示すのは、算定は単なる式の適用ではなく、境界とデータの選択という設計行為であるという点です。

CFPの算定を行うことは、単なる可視化にとどまらず、

  • 排出構造を製品単位で把握しやすくなる
  • 改善すべき工程や論点を構造的に整理できる
  • サプライチェーンとの議論の前提が整う

といった、製品単位での意思決定を支えます

※CFP算定の具体的な手順やデータ収集・配分の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

→ 【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

7. ISO14067とは?CFP算定の国際規格と要求事項

ISO14067は、製品カーボンフットプリントの算定および報告に関する国際規格です。

この規格では、以下が重視されます。

  • システム境界の明示
  • データ品質の評価
  • 不確実性の扱い
  • 比較可能性の確保
  • PCR(製品カテゴリールール)との整合

比較可能性を担保するためには、前提条件を揃える必要があります。例えば、同じ製品であっても、電力排出係数の設定や算定範囲が異なれば数値は大きく変わります。そのため、単純比較は誤解を招く可能性があります。

ISO14067認証は義務ではありませんが、制度対応や国際取引ではISO整合性を説明できる状態が重要になります。

なお、経済産業省・環境省が作成した「カーボンフットプリントガイドライン」は、ISO14067に整合させて作成されています。

※ISO14067の詳細については、こちらの記事で解説しています。

→ (近日公開予定)

8. CFPの活用|設計・調達・開示への活かし方

これまで説明してきたように、CFPは、単に排出量を把握するための指標ではなく、製品単位での意思決定を支える実務ツールとして活用されます。特に、設計・調達・開示の3つの領域で重要な役割を果たします。

① 設計への活用(削減余地の特定)

CFPを算定することで、製品のどの工程で排出量が多いかを把握できます。

例えば、原材料由来の排出が大きい、使用段階のエネルギー消費が支配的、といった構造が明らかになります。これにより、どの工程を優先的に改善すべきか(削減の優先順位)を合理的に判断できるようになります。

設計段階での材料変更や構造見直しといった意思決定に直結する点が、CFPの大きな特徴です。

② 調達への活用(サプライヤー評価)

サプライチェーン全体での排出量削減が求められる中、調達先に対して製品単位の排出量データ(CFP)の提示を求める動きが広がっています。

企業は、排出量の少ない材料・部品の選定、サプライヤーの比較・評価といった場面でCFPを活用します。

CFPは「調達基準」の一部になりつつあるといえます。

③ 開示への活用(規制・顧客対応)

欧州電池規則やCBAMなどでは、製品単位での環境情報の提示が求められています。また、顧客企業からの要請として、製品単位の排出量データの提供を求められるケースも増えています。

このような場面で、CFPは開示・報告の基盤データとして活用されます。また、こうした開示対応を起点に整備されたCFPは、企業の意思決定にも活用されていきます。

CFPの本質は、排出量を見える化すること自体ではありません。重要なのは、その情報をもとに、設計・調達・開示の意思決定を行うことです。

例えば、

  • 製造工程の改善に投資すべきか
  • 原材料を見直すべきか
  • サプライヤーを変更すべきか

といった判断は、CFPによって初めて構造的に整理できます。

つまりCFPは、「排出量を測る指標」ではなく「意思決定を支えるインフラ」といえます。さらに、Scope3削減の具体的なアクション設計にも活用され始めています。

9.カーボンフットプリントの企業事例|導入効果と課題

明治グループ

牛乳1LあたりのCFP算定により、排出量の約6〜7割が酪農段階に集中していることが明らかとなり、製造工程の効率化よりも、原材料段階の改善が優先される構造であることが明確になりました。これを受け、飼料改善や物流効率化への取り組みが進められています。

旭化成

機能樹脂製品のCFPデータ提供を開始し、顧客企業が最終製品のScope3を精緻化できる体制を整備。サプライチェーン全体の排出量データ基盤構築に貢献しています。

パナソニック

製品利用段階の排出量可視化を通じ、消費者への情報提供と削減行動促進を図っています。

CFPは開示のための数字ではなく、改善優先順位を示すツールとして活用されています。

10. CFP導入のメリット・デメリット

CFPを導入する最大のメリットは、排出量の“総量”がわかることより“構造”が見えるようになる点です。どの工程が排出の大半を占めているのかが明確になります。これにより、改善の優先順位を合理的に判断できます。

たとえば、製造工程の省エネ投資を検討していた企業が、CFP算定の結果、原材料調達段階の排出が大半を占めていると判明すれば、調達戦略の見直しや代替材料の検討が優先されることになります。CFPは、こうした意思決定の方向性を示す役割を果たします。

また、顧客企業からの排出量データ提供要請に迅速に対応できる点も実務上の利点です。特に多くの企業でScope3カテゴリー1の精緻化が進む中、製品単位の排出量データを整備していることは競争力の一部になりつつあります。

さらに、社内の設計部門や調達部門と環境部門の共通言語として機能する点も見逃せません。排出量を製品単位で可視化することで、脱炭素が抽象的な目標ではなく、具体的な設計条件として議論できるようになります。

一方で、課題もあります。最大のハードルはデータ収集です。一次データの取得には時間とコストがかかり、サプライヤーとの連携も不可欠です。また、システム境界や排出係数の選定によって数値が変動するため、比較可能性や説明責任への配慮も必要です。

CFPは単発で終わる算定作業ではなく、継続的に更新される製品単位排出量データ基盤として整備することが重要です。

※CFPの実務対応については、以下の記事で解説しています。

【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

(参考)CFPの理解を深めたい方へ

CFPの理解や実務対応をさらに深めたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。基礎理解から実務対応まで体系的に整理できます。

【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

Scope3・CFP・LCAの違いとは?関係性・役割・使い分けをわかりやすく整理

11. まとめ

CFPは、単なる環境指標ではありません。CFPは「測る」ためのものではなく、「削減を実行するための基盤」です。

製品単位で排出構造を可視化し、設計・調達・規制対応を支える基盤です。組織単位の排出量管理に加え、製品単位の排出量分析を行うことが、これからの脱炭素実務の前提となります。

CFPは計算ではなく設計であり、単発算定ではなくデータ基盤整備です。

制度や市場環境が変化する中で、製品単位排出量をいかに整備・活用できるかが、企業の次の競争条件となるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. カーボンフットプリント(CFP)とは何ですか?

CFPとは、製品やサービス1単位あたりの温室効果ガス排出量を、ライフサイクル全体でCO₂換算して算定する指標です。企業単位の排出量(Scope1・2・3)とは異なり、製品単位で排出構造を把握できる点が特徴です。

Q. CFPとScope3の違いは何ですか?

Scope3は企業全体のサプライチェーン排出量を集計する枠組みであり、CFPは製品ごとの排出量を分析する指標です。

Scopeが「全体把握」、CFPが「分解分析」という関係にあります。

※より詳しい違いは以下の記事で解説しています。

Scope3・CFP・LCAの違いとは?関係性・役割・使い分けをわかりやすく整理

Q. CFPとLCAの違いは何ですか?

LCAは環境影響全体を評価する手法であり、CFPはその中でも温室効果ガス排出量に特化した指標です。

CFPはLCAの考え方をベースに算定されます。

※より詳しい違いは以下の記事で解説しています。

Scope3・CFP・LCAの違いとは?関係性・役割・使い分けをわかりやすく整理

Q. CFPは義務化されていますか?

日本では一律に義務化はされていませんが、欧州電池規則など特定の制度では申告が求められます。また、取引先から製品単位排出量の提示を求められるケースも増えています。

Q. CFP算定にはどのくらいの期間がかかりますか?

製品数やデータ整備状況によりますが、初回は数か月程度かかることがあります。既存のLCAデータや排出係数が整備されていれば、短縮可能です。

Q. CFP算定の費用はいくらですか?

対象製品数、算定範囲、一次データの有無によって大きく異なります。サプライヤーからのデータ収集が必要な場合は工数が増加します。継続運用を前提に標準化することが重要です。

Q. 中小企業でもCFP対応は必要ですか?

義務ではありませんが、大企業のScope3対応に伴い、取引先として排出量データの提供を求められるケースが増えています。将来的な対応を見据えた準備が重要です。

Q. ISO14067認証は必須ですか?

法的な義務ではありません。ただし、国際取引や制度対応ではISO14067に整合した算定であることを説明できる体制が求められる場合があります。

※ISO14067の詳細については、こちらの記事で解説しています。

→ (近日公開予定)

Q. CFPとカーボンニュートラルの違いは何ですか?

CFPは排出量を「測る」ための指標であり、カーボンニュートラルは排出量を削減・相殺して「ゼロに近づける」考え方です。

Q. CFPはどのような場面で活用されますか?

主に以下の3つです。

  • 製品設計(削減余地の特定)
  • 調達(サプライヤー評価)
  • 開示(規制・顧客対応)

Q. CFP削減目標はどう設定すればよいですか?

まず製品ごとのベースライン排出量を算定し、どの工程が排出の大半を占めているかを特定します。その上で、材料変更、設計改善、エネルギー効率向上など工程別に削減策を積み上げて目標を設定します。製品単位での削減目標は、企業全体のScope削減目標とも整合させることが重要です。

Q. CFPデータは必ず公開しなければなりませんか?

日本では一律の公開義務はありません。ただし、欧州電池規則など特定制度の対象製品では申告義務が生じます。また、取引先からの情報開示要請に対応するため、データを保有しておくことが実務上重要になるケースがあります。

Q. 排出係数はどのデータベースを使えばよいですか?

日本ではAIST-IDEA、国際的にはecoinventなどが広く利用されています。算定目的や対象市場に応じて、適切なデータベースを選定することが重要です。

参考

① ISO関連


② 日本(経済産業省)


③ EU規制関連

④ データベース関連

⑤企業関連

明治グループ

旭化成

パナソニック

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