【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

【実務担当者向け】カーボンフットプリント(CFP)算定のやり方|手順・必要データ・配分・失敗例まで徹底解説

CFP算定は、静かには始まりません。ある日突然、こう言われます。

「この製品のカーボンフットプリント、出せますか?」

それは顧客からの要請かもしれません。規制対応かもしれません。社内方針の変更かもしれません。そして多くの場合、担当者は準備ができていません。

本記事では、

  • 実際に担当になったら何が起きるか
  • どこで止まるか
  • 何を判断しなければならないか
  • どのような失敗が起きるか

を、実務の順番に沿って解説します。

なお、CFPの定義や制度背景はこちらの記事を参照ください。
→ 【基礎編】カーボンフットプリント(CFP)とは?考え方・算定の基本・最新動向


1. CFP算定は「依頼」から突然始まる

CFP算定の多くは、計画的に始まりません。

  • 欧州電池規則対応で急に必要になる
  • 顧客から期限付きで提出を求められる
  • 経営から「製品単位で出せ」と言われる

欧州電池規則では、一定容量以上の電池に対しCFP申告が義務付けられています。また、ESPRやデジタル製品パスポート(DPP)も、製品単位排出量の把握を前提に設計されています。

一方、顧客からの排出量データ要請がなぜ増えているのかは、Scope3カテゴリー1の構造と関係しています。顧客企業はScope3カテゴリー1(購入した製品・サービス)の排出量を算定するために、調達先であるサプライヤーに製品単位の排出量データの提供を求める必要があるためです。つまりCFPは「将来の話」ではなく、「突然必要になる実務」です。

しかし社内外からCFP算定の依頼を受ける時点では、

  • 算定目的が曖昧
  • 算定の境界が未設定
  • データ整備状況が不明

というケースがほとんどです。

この曖昧さを放置したまま始めると、途中で必ず止まります。

顧客からの要請の背景については、こちらの記事を参照ください。

→ Scope3におけるサプライヤーエンゲージメントの進め方:算定結果と排出削減を結びつける実務のポイント

2. 最初に決めないと破綻する3つの設計判断

CFP算定は「計算そのもの」というより、「算定のための計算システムの設計」と捉えることをお勧めします。

以下、その理由を説明します。

2-1 算定目的を明確にする

最初に問うべきは、「なぜ算定するのか」です。

規制対応用であれば、第三者が検証可能な前提整理が必要です。顧客提出用であれば、比較可能性と説明責任が重要になります。社内の改善目的であれば、必ずしもISOへの完全整合は必要ありません。

目的が違えば、

  • システム境界
  • データ精度
  • 工数
  • 公表の有無

がすべて変わる可能性があります。

目的を決めずに進めると、「ここまでやる必要はなかった」、「これが必要だった」というやり直しが発生する可能性が高いです。

2-2 システム境界は目的に応じて設定する

CFP算定では、どこまでの工程を含めるかを決めます。Cradle-to-Gateか、Cradle-to-Graveかを選択します。

境界は網羅性で決めるのではありません。 「算定目的に応じて設定する」のが一般的です。

顧客要請や社内改善であればGateまでで十分な場合もあります。規制対応であればGraveまで求められることもあります。

境界を欲張って広げすぎると、使用段階や廃棄段階の仮定が増え、結果として算定結果の説明が難しくなるかもしれません。

【図1:ライフサイクルとシステム境界の概念図】
出典:カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省・環境省)

2-3 データの粒度と管理レベルを設計する

ここで説明する「データ」とは、「活動量」です(「排出係数」ではありません)。

活動量をどこまで製品単位に落とせるか、がとても重要です。

例えば、

  • 工場電力使用量を製品別に配分できるか
  • 副資材使用量を把握しているか
  • 歩留まりを反映できるか

といった点です。

現状のデータ管理状況を理解したうえで、実現可能な収集データの粒度と管理レベルを設定することが必要です。

3. 工程を分解できなければ、CFP算定は始まらない

CFP算定をExcelで実施する前に必要なのが、「工程の構造化」です。 工程が構造化されていないと、収集すべきデータ(活動量)が決まりません。

以下、具体例を示しながら説明します。

3-1 原材料・部品の調達工程の整理

この工程ではBOM(※)が出発点になります。

しかし実務では、

  • 最新版でない
  • 副資材が抜けている
  • 歩留まりが反映されていない

という問題が頻発します。

そのため、現有するBOMをベースに、算定目的に応じた精度で工程を分解することが肝要です。

※BOM(Bill of Materials)とは、製品を構成する原材料・部品の一覧表です。

3-2 生産工程の整理

教科書的な工程区分では足りません。

生産工程で問われるのは、

  • どの工場か
  • どのラインか
  • 共用設備をどう考えるか
  • 歩留まり損失はどう扱うか

です。

これら情報を整理し、工程を構造化していくことがCFP算定の出発点です。

4. 排出量は「活動量 × 排出係数」で決まる

CFP算定の基本式は単純です。

排出量 = 活動量 × 排出係数

しかし、実務で難しいのは、

  • 活動量をどう集めるか
  • 排出係数をどこから選ぶか
  • 共通工程をどう配分するか

といった「データ設計」です。

CFP算定とは、計算式を適用する作業ではなく、どのデータを使って排出構造を表現するかを設計する作業とも言えます。

4-1 活動量とは何か

活動量とは、排出を生み出す「実際の活動の量」です。代表的なものは次の通りです。

  • 原材料使用量(kg)
  • 電力使用量(kWh)
  • 燃料使用量(L)
  • 輸送距離(km)
  • 廃棄量(kg)

CFP算定におけるデータ収集で困難なのは、排出係数よりも活動量です。

排出係数はデータベースから取得できますが、活動量は自社固有のデータであり、自社の生産・購買・物流情報から収集する必要があります。

そのため、多くの企業では次のような問題に直面します。

  • BOMが最新版でない
  • 原材料重量が把握されていない
  • 工場電力が製品単位に落とせない
  • 輸送距離が管理されていない
  • 製品使用後の廃棄法がわからない

つまりCFP算定の実務とは、活動量を整理する作業と言っても過言ではありません。

4-2 排出係数とは何か

排出係数は、単位活動量あたりの温室効果ガス排出量です。

例えば、

  • 電力1kWhあたりの排出量
  • 原材料1kgあたりの排出量

などです。

排出係数は2種類に分類されます

種類内容
一次データ自社・サプライヤーの実測値
二次データLCAデータベース掲載値

【表1.排出係数の分類】

代表的な二次データには次のものがあります。

  • AIST-IDEA(日本のLCAデータベース)
  • ecoinvent(国際的LCAデータベース)

一次データは精度が高い一方、取得コストが高いという特徴があります。

そのためCFP算定では、一次データと二次データを組み合わせて使用することが一般的です。

4-3 CFP算定で集めるデータ

CFP算定で必要になるデータは、実務上、次の3種類に整理できます。

データ種類内容
活動量実際の活動量原材料重量、電力使用量
配分情報共通工程の分配方法重量配分、数量配分
排出係数単位あたり排出量kgCO2e/kg、kgCO2e/kWh
【表2.CFP算定で必要になるデータ】

この3つが揃って初めてCFP算定が成立します。

活動量は「管理」、排出係数は「選択」が課題となります。 配分情報は活動量を決めるための追加情報です。

参考として、活動量と排出係数の例を以下に示します。

活動量排出係数
原料使用量コットン5,000kg7.000 kgCO2e/kg
ポリマー2,500kg5.000 kgCO2e/kg
化学物質A500kg2.000 kgCO2e/kg
化学物質B200kg10.000 kgCO2e/kg
製造エネルギー消費電力量5,000Kwh0.523 kgCO2e/kWh
都市ガス消費量2,000Nm30.201 kgCO2e/Nm3
使用消費電力量0.3KWh/日0.523 kgCO2e/kWh
【表3:活動量と排出係数の例(数値は例示です)】

4-4 算定ツール(Excel)の活用

CFP算定は必ずしも専用ソフトが必要なわけではありません。 初期段階ではExcelを用いて算定することが一般的です。

例えば大阪府は、サプライチェーン排出量算定のためのExcelツールを公開しています。

このようなツールでは、一般的に次の構造でCFP算定が行われます。

  1. 活動量データを入力
  2. 排出係数を設定
  3. 排出量を自動計算

Excelは手軽に利用できる一方で、

  • 配分ロジックの管理
  • バージョン管理
  • 製品数増加への対応が困難

といった課題もあります。

算定対象製品が増えてくると管理が複雑化するため、CFP算定用アプリケーションの導入を検討する企業が増えてきています。

CFP算定を単発の計算で終わらせるのではなく、製品データとして継続的に管理する考え方はPCF(Product Carbon Footprint)管理と呼ばれます。

CFPとPCFの関係については、こちらの記事を参照ください。

→ 電池業界のカーボンフットプリント(CFP/PCF)とは? 欧州電池規則・バッテリーパスポートを踏まえた実務整理

【図2:カーボンフットプリント(CFP)算定の基本プロセス】
出典:カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省・環境省)を参考に著者作成

5. データ収集は想像より難しい

工程を整理しても、活動量や排出係数は簡単には集まりません。

例えば、

  • BOMの最新版がない
  • 単位が揃わない(kg / 個 / m)
  • 輸送距離が分からない
  • サプライヤーがCFPを持っていない

など、多くの課題に直面するのが一般的です。

ここで重要なのは、完璧を求めすぎないことです。ISO14067では、データの不確実性を管理することが求められています。つまり、必ずしもすべて一次データである必要はありません。

重要なのは、

  • どのデータを使ったのか
  • なぜそのデータを選んだのか

を説明できる状態にしておくことです。
CFP算定は、完全な精度よりも説明可能性が重要になる場面が多いです。

6. 配分(Allocation)は実務上、有効な手法

CFP算定における活動量を決定する際、最も難しいのは共通工程の扱いです。

例えば、

  • 同一ラインで複数製品を生産している
  • 工場で共通ボイラーを使用している
  • 共通空調設備・コンプレッサーを使用している

といった場合です。

これらの排出量は、特定の製品に直接紐づくわけではありません。

そのため、製品単位の排出量を算定するには、共通負荷を何らかの基準で分配する必要があります。

一般的に用いられる配分方法には次のようなものがあります。

  • 重量ベース配分
  • 生産数量ベース配分
  • 工程時間ベース配分
  • 売上・経済価値ベース配分

しかしLCAおよびCFPの国際規格では、安易な配分は推奨されていません。ISO 14044では、可能な限り配分(allocation)を回避することが原則とされています。

具体的には、次のような順序で検討することが推奨されています。

【表4:多機能プロセスの扱い方】

出典:Reinout et al.(2021), frontiers in Sustainability; System Expansion and Substitution in LCA: A Lost Opportunity of ISO 14044 Amendment 2

ルール上は、工程分割やシステム拡張などによって配分を回避することが望ましいとされています。

しかし実務では、設備構成や工程、データ構造の制約により、配分を完全に回避することはほとんど不可能です。そのため多くのCFP算定では、最終的に配分を採用することになります。

ここで重要なのは、配分方法を明示することです。配分ルールが曖昧なまま算定すると、後から見直した際にCFP値が変わる可能性があります。数値が変わること自体は問題ではありません。

問題なのは、

  • なぜ数値が変わったのか説明できない
  • 社内で配分ルールの合意が取れていない

といった状況です。

配分は「誤差」ではありません。意図的な設計判断です。どの配分軸を採用したのか、なぜその方法を選択したのか。この説明ができる状態にしておくことが、CFP算定の信頼性を担保します。

多くの企業では、主要原材料やエネルギー使用量は直接計測し、共通設備の負荷のみ配分するという形でCFP算定を行っています。

7. よくある失敗パターン(そして、どう回避するか)

CFP算定は「やれば終わる」作業ではなく、途中で詰まりやすいですが、つまづくポイントが決まっている仕事です。

ここでは、現場で実際によく起こる失敗を整理します。

※「全てを完璧に避ける」のではなく、「失敗の芽を小さいうちに潰す」ことが重要です。

① 境界を広げすぎて、仮定だらけになり止まる(「理想のフルLCA病」)

典型シーン

依頼元から「どうせなら使用・廃棄まで入れて」と言われ、Cradle-to-Graveに挑む。

しかし実務では、使用段階・廃棄段階は社内に実測値がないことが多く、途端に次のようになります。

  • 使用条件(何年使う/何回使う/何kWh使う)の前提が決められない
  • 廃棄・リサイクルのシナリオが部門ごとに違う
  • 「その前提は根拠が薄い」と法務・品質・広報が止める
  • 結果、算定そのものが棚上げになる(=提出できない)

なぜ致命傷になるか

境界が広いほど、数値の精度よりも前提(シナリオ)の妥当性が争点になります。

この争点には「正解」がなく、合意形成に時間がかかるため、期限がある案件ほど破綻します。

回避策(現実的な落とし所)

  • まずはCradle-to-Gateで提出可能な状態を作る(=止まらない形にする)
  • 使用・廃棄を含めるなら、最初から「仮定を含む算定である」ことを前提に
    • 公的・業界の公開文書に寄せたシナリオを採用する
    • 自社独自の推測を最小化する
  • 依頼元に確認すべき質問を先に整理する
    • 「提出用途は何か?(社内用/比較用/公表)」
    • 「求められる境界はどこまでか?(Gateで良いのか?)」

使用・廃棄段階は、多くの場合シナリオ設定が必要になります。社内合意が得られるシナリオの設定(公開文章等を参考にした設定)を早い段階で整理し、途中で頓挫させないことがポイントです。

② 一次データに固執し、収集交渉で燃え尽きる(「サプライヤーに出してもらえる前提」)

典型シーン

「ISOだから一次データ必須」と考え、サプライヤーにデータ提供を依頼する。

しかし返ってくる返答は、だいたい以下の3パターンです。

  • そもそもCFPを算定していない(やり方も分からない)
  • NDAや社内ルールにより「開示できない」
  • 提供されても、境界・係数・配分の前提が不明で、こちらが使えない

なぜ致命傷になるか

一次データ収集は算定作業ではなく交渉・教育・合意形成です。

これを初回から全面展開すると、期限内に終わらない確率が跳ね上がります。

回避策(現実的な運用)

  • 最初から二段構えで進める
    • Phase1:二次データ中心でCFPを算定する
    • Phase2:影響の大きい部材(ホットスポット)だけ一次データ化する
  • サプライヤーへの依頼も最初から「CFP値をください」ではなく、段階的に行う
    • まずは活動量(重量・購入量・エネルギーなど)を聞く
    • 次に相手が使用した係数の出典と境界を聞く
    • 最後にCFP/PCFそのもの(可能なら)を聞く

精度を追いすぎて、サプライヤーの協力を得るための工数が膨大にかかったり、サプライヤーから必要なデータの提供が得られなかったりすると、算定が終わりません。算定目的に立ち戻りつつ、二次データを採用していく姿勢が重要となります。

③ 配分ルールを決めない/後から変える(「数字が揺れて信用を失う」)

典型シーン

同一ライン・同一設備で複数製品を作っている。工場電力・蒸気・圧縮空気・空調など、共通負荷が大半。

そこで配分が必要になるが、最初にルールを決めず算定を開始する。

  • Aさんは重量配分、Bさんは数量配分
  • 工場別・月別で配分軸がブレる
  • 「前回より増えた/減った」の説明ができない
  • 結果、社内(または顧客)から「このCFP、信用できる?」と言われる

回避策

  • 配分は誤差ではなく設計判断として、最初に固定する
  • 最低限、次の内容を文章で残す(監査・説明のため)
    1. どの共通工程に配分が必要か
    2. 配分軸(重量・数量・売上・工程時間など)
    3. 採用理由(目的との整合)
    4. 変更ルール(いつ、どういう条件で見直すか)

④ 活動量が取れず、係数ばかり議論して空転する(「本当の地獄は“活動量”」)

典型シーン

会議では排出係数の話で盛り上がるのに、実務が進まない。 理由は単純で、係数より活動量が取れないから。

  • BOMが最新版でない/副資材が抜けている
  • 購買データと製造実績の単位が違う(kg、個、m、Lが混在)
  • 歩留まり・ロスが反映されていない
  • 工場電力が「工場合計」しかなく、製品別に分けられない

係数は「選べる」ことが多いですが、活動量は「現場から出てこない」と算定できません。

回避策

  • 係数議論の前に、まず活動量の収集方法を決める
    • どのシステムから取るか(ERP、生産管理、購買、電力計測、物流)
    • 誰が責任を持つか(部門)
    • 単位をどれに統一するか(kgに寄せる、機能単位に合わせる等)
  • どうしても製品別に分けられない共通負荷は、6章の配分ルールで処理する
  • 「粗くても出す」ために、活動量の優先順位を決める
    • まず主要原材料・主要エネルギー
    • 次に物流
    • その後、副資材・廃棄物

境界説明や前提条件が整理されていないCFP値の公表は避けるべきです。

公開する場合は、境界や算定条件・シナリオ等を整理し、説明責任を果たせる状態にする必要があります。

⑤ ISO14067を理解せずそれっぽい数字を出し、後で炎上する(「前提が説明できない」)

典型シーン

期限が迫り、Excelで計算して数字は出せた。

しかし提出・公表の段階で問題が発生する。

  • システム境界が説明できない
  • データ品質・二次データの出典が整理されていない
  • 配分ルールが文書化されていない
  • 比較可能性が担保されていないのに、比較広告のように見える

回避策

最低限、提出物に「数字以外の情報」をセットで用意する。

  • 境界(Cradle-to-Gate/Grave)
  • 機能単位
  • 主要データの出典(一次/二次の区別)
  • 配分方法
  • 不確実性の前提(粗い箇所の宣言)

他の製品との「比較」は特に厳密なルールが定められているため、PCR等の前提条件をそろえることが不可欠です。

⑥ 1回やって終わり、次の依頼でまた地獄を見る(「使い捨てCFP」)

典型シーン

初回算定はなんとか終えた。報告書も提出した。

しかし、次に同じ依頼が来たとき、またゼロから始まる。

  • Excelが最新版か分からない
  • どの係数を使ったか追跡できない
  • 配分ロジックが“担当者の頭の中”にしかない
  • 製品仕様が変わったのに反映されていない

回避策

「更新される前提」で最低限の運用体制を整える。

  • ファイルの版管理(前提・係数・配分ルールを固定)
  • BOM変更時の再算定トリガー
  • 年次更新のルール(全部ではなく、ホットスポットだけ更新でも可)

ここまで仕組みが整うと、CFPが“単発の算定”から“継続的な運用”に変わります。

8. CFP算定の目的:排出構造(ホットスポット)を見つけること

CFP算定を実施すると、多くの担当者が「これは単なる計算作業ではない」と気づきます。

CFP算定で本当に問われるのは、次のような判断です。

  • どこまでを対象とするか(境界設計)
  • どこまでの粒度で管理するか(粒度設計)
  • 共通工程をどう扱うか(配分設計)
  • どのデータを採用するか(精度設計)

例えば、使用段階を含めるかどうか。含めれば数値は大きく変わりますが、その多くはシナリオ設定になります。Gateまでに限定すれば精度は上がるが、規制対応としては不十分になる場合もあります。

ここには正解はありません。あるのは、目的に整合した設計判断だけです。CFP値そのものは結果です。その背後にある判断の積み重ねこそが、本質です。

CFP算定とは、製品単位の温室効果ガス排出構造を理解する行為です。

つまり

  • 原材料依存度
  • エネルギー依存度
  • 調達構造の偏り

といった構造が可視化されます。

図3のようにCFP算定結果をライフサイクル工程ごとに分解すると、排出量の大部分を占める工程(ホットスポット)が明確になります。

【図3:CFP算定結果の例(ライフサイクル排出構造)】

多くの製品では、排出量の大半は製造工程ではなく、原材料調達や製品使用時(エネルギー使用)に集中する傾向にあります。

そのため、CFP算定の目的は単に排出量を算出することだけではなく、排出構造を理解し、削減の優先順位を決めることにあります。

つまりCFPは、排出量を測るツールであると同時に、製品の排出構造を再認識するプロセスでもあります。

CFP算定は、企業全体の温室効果ガス排出量管理とも密接に関係しています。

多くの企業では、サプライチェーン全体の排出量を把握するためにScope3排出量の算定を進めています。特にScope3カテゴリー1(購入した製品・サービス)では、調達先が算定した製品単位排出量(CFP / PCF)が活用されるケースが増えています。またカテゴリー11(製品の使用)とカテゴリー12(製品の廃棄)では、CFP算定で設定したシナリオを使用する企業も見受けられます。

つまりCFPは、

  • 製品の排出構造を理解するためのツールであると同時に
  • サプライチェーン全体の排出量管理を支えるデータ基盤

でもあります。

Scope3算定について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参照してください。

→ Scope3とは?算定対象・15カテゴリをわかりやすく解説

9. 算定を運用に変える

多くの企業で起きることがあります。 初回算定は実施した。報告書も作成した。しかし、その後更新されない。

これでは、CFPは単発プロジェクトで終わってしまいます。 継続的な運用に変えるためには、最低限、以下が必要です。

  • 更新頻度を決める(年1回か、設計変更時か)
  • BOM変更時の再算定ルールを決める
  • 新製品設計段階で試算を組み込む
  • 調達部門と情報連携する

特に重要なのは、設計部門との接続です。

CFPが設計条件に組み込まれなければ、排出削減は進みません。また、製品数が増えると、Excel管理では限界が来ます。

  • バージョン管理ができない
  • 前提変更が追跡できない
  • 配分ロジックが属人化する

この段階で、CFPデータの管理基盤を検討することになります。

CFP算定を

  • 少数製品の一時対応で終わらせるのか
  • 製品群全体の排出構造を継続管理するのか

によって、必要な仕組みは大きく変わります。

近年では、製品カーボンフットプリント(PCF:Product Carbon Footprint)を継続的に管理するためのシステムを導入する企業も増えています。

PCF管理ツールでは、

  • 製品BOMと排出係数の紐付け
  • サプライヤーデータの統合
  • 算定ロジックの標準化
  • 製品更新時の自動再計算

などを行うことで、CFP算定を単発作業ではなく継続的な製品データ管理として運用することが可能になります。

運用とは、単に数値を出し続けることではありません。判断を更新し続けることです。初回算定は粗くて構いません。

重要なのは、

  • 改善し
  • 再計算し
  • 構造を見直す

という循環を作ることです。

→ 製品カーボンフットプリント管理ツール「booost PCF」

終わりに

CFP算定は比較的難しいかもしれません。しかし制御不能ではありません。

  • 目的を明確にする
  • 境界を欲張らない
  • 活動量を管理する
  • 配分ルールを明示する
  • 単発で終わらせない

等、小さな判断を積み重ねていくことで、制御可能となります。そしてその判断が、製品設計と調達戦略を変え、ひいては企業価値向上につながっていきます。

参考

① ISO関連

② 日本(経済産業省)

③日本(大阪府)

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