SSBJで求められる「説明可能なScope3」とは?リスク・機会・事業戦略とのつながりを整理

SSBJ基準への対応が進む中で、Scope3は単なるGHG排出量の開示項目ではなく、企業価値や事業戦略と直結するテーマとして扱われるようになっています。特に重要なのは、投資家が単に「排出量の多寡」を見ているのではなく、脱炭素社会への適応力や将来の競争力を評価している点です。製品使用時の排出量(カテゴリ11)は将来の市場競争力と、原材料・調達に関わるカテゴリ1はその実現可能性と深く関係しています。

そのためSSBJでは、単にScope3を算定・開示するだけではなく、「なぜそのカテゴリが重要なのか」「どのような戦略・リスク認識のもとで管理しているのか」を説明できる状態が求められます。

本記事では、SSBJにおいてなぜScope3が経営課題となるのかを整理したうえで、リスク・機会・事業戦略・説明可能性とのつながりを解説し、Scope3算定方法そのものではなく、「なぜScope3が経営課題となるのか」を中心に整理します。

本記事の概要

  • SSBJで、なぜScope3が重視されるのか
  • なぜカテゴリ別開示が必要になるのか
  • なぜCat 11(使用段階)が将来競争力と直結するのか
  • なぜCat 1(調達・原材料)がその実現基盤となるのか
  • 投資家はScope3の何を見ているのか
  • 「説明可能なScope3」とは何か

1.なぜSSBJでScope3が重視されるのか

SSBJ基準では、Scope3は単なるGHG排出量データとしてではなく、企業価値に影響を与えるリスク・機会を説明するための重要な指標として位置づけられています。

従来、GHG排出量開示では、自社の直接排出(Scope1)や使用電力由来の排出(Scope2)が中心的に扱われるケースも少なくありませんでした。しかし現在は、企業活動に伴う気候関連リスクや成長機会の多くが、自社単体ではなくバリューチェーン全体で発生すると考えられるようになっています。例えば、原材料価格の上昇、サプライヤーへの排出削減要求、低炭素製品への市場シフト、顧客からの環境性能要求、GX投資・調達条件の変化といった変化は、企業の将来キャッシュフローや競争力に直接影響します。

そのため投資家は、単に「排出量が多いか少ないか」だけではなく、

  • どこにリスクが集中しているのか
  • 将来の市場変化へ適応できるのか
  • 低炭素化を実行できる体制があるのか

を重視するようになっています。

こうした背景からSSBJでは、Scope3を通じて、企業がバリューチェーン全体のリスク・機会をどのように認識し、どのような戦略・管理体制で対応しているのかを説明することが求められています。そのためSSBJでは、単にScope3合計値を開示するだけではなく、カテゴリ別排出量の開示が求められています。これは、「どの領域にリスク・機会が存在するのか」「どのバリューチェーンが企業価値へ大きく影響するのか」を把握・説明するためです。例えば、カテゴリ11(販売した製品の使用)が大きい企業では、製品の省エネ性能や低炭素化戦略が将来競争力と直結します。一方でカテゴリ1(購入した製品・サービス)が大きい企業では、調達戦略やサプライヤー管理が重要な経営課題となります。つまり、Scope3は単なる環境指標ではなく、「将来の企業価値を説明するための経営指標」として重要性が高まっているのです。

下図で、なぜScope3が「排出量管理」ではなく「経営課題」になるのか、全体構造を整理します。

図.なぜScope3が“経営課題”になるのか

※SSBJ・ISSB開示の全体像や、企業価値との関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
SSBJ・CSRD・ISSBの違いとは?企業価値評価の共通構造を整理

※SSBJについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
SSBJ(サステナビリティ開示基準)とは?対象企業・義務化スケジュール・企業対応の全体像をわかりやすく解説

※Scope3については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Scope3とは?算定対象・15カテゴリをわかりやすく解説

2.なぜCat 11が事業戦略の中心になるのか

SSBJにおいてScope3が重要視される背景には、企業の将来競争力が「製品・サービスの使用段階」と強く結びつくようになっていることがあります。

特にカテゴリ11(販売した製品の使用)は、製品が顧客に使用される際のGHG排出量を対象とするため、製品そのものの環境性能や市場競争力を反映しやすい領域です。

例えば、自動車業界ではEV化や燃費性能、家電業界では省エネ性能などが競争力と直結しています。つまり、脱炭素社会への移行が進むほど、「使用時にどれだけ排出する製品か」が市場評価へ大きく影響するようになります。

そのためカテゴリ11は、単なる排出量項目ではなく、

  • 将来も選ばれる製品か
  • 市場変化へ適応できるか
  • 移行リスクへ対応できるか

を示す経営指標として重要性が高まっています。

実際、Scope3の中でもカテゴリ11の割合が大きい企業では、製品戦略そのものが気候関連戦略と直結するケースも少なくありません。このように、Scope3は単なる排出量管理ではなく、事業戦略や市場競争力と密接に結びつくテーマになっているのです。

※Scope3カテゴリ11(販売した製品の使用)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Scope3カテゴリ11とは|使用段階の排出が企業価値と直結する理由と算定の考え方

3.Cat11を実現するには、Cat1改革による「実行可能性」が重要になる

カテゴリ11が将来の競争力や市場評価と直結する一方で、その実現には、原材料・部材・調達を含むサプライチェーン全体の変革が欠かせません。

例えば、製品の省エネ性能向上や低炭素化を進めようとしても、

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