SSBJ基準とは?|対象企業・適用スケジュールと企業対応をわかりやすく解説

SSBJ基準について、「自社はいつから対象になるのか」「何を開示するのか」「準備をどこから始めるべきか」と迷う担当者も多いでしょう。

SSBJ基準は2025年3月に公表され、2026年2月の開示府令等の改正により、一定規模以上の東京証券取引所プライム市場上場企業への段階適用が制度化されました。本記事では、2026年8月時点の確定事項、制度上の方針、今後の検討事項を分け、対象企業・適用時期・開示項目・初期対応を整理します。さらに、SSBJ対応が義務ではなく、2050年の社会要請を踏まえた企業価値向上につながる点も明らかにします。

※SSBJ関連記事全体の構造については、以下の記事で整理しています

→ SSBJ(サステナビリティ開示基準)とは?対象企業・義務化スケジュール・企業対応の全体像をわかりやすく解説

SSBJ基準とは

SSBJは、Sustainability Standards Board of Japan(サステナビリティ基準委員会)の略称です。日本のサステナビリティ開示基準を開発し、国際的な基準開発へ意見を発信する役割を担います。

SSBJが公表したサステナビリティ開示基準を「SSBJ基準」と呼びます。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のIFRS S1・S2と機能的に整合するよう設計されており、企業の見通しへ影響すると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスクと機会について、投資家等の意思決定に有用な情報を提供することが目的です。

基準主な役割
サステナビリティ開示基準の適用報告主体、重要性、情報のつながり、準拠表明など、基準全体に共通するルール
一般開示基準サステナビリティ関連のリスクと機会に関する一般的な開示要求
気候関連開示基準気候関連のリスクと機会、GHG排出量などの開示要求

2025年3月公表の3基準は2026年3月13日に改正されました。また、2026年6月11日には、温対法のSHK制度による排出量を用いる場合の開示を扱う実務対応基準第1号が公表されています。ステナ情報(財務関連サステナビリティ情報)が重視される点が、従来のESG開示との大きな違いです。

対象企業と導入スケジュール

2026年2月20日に公布・施行された開示府令等により、東京証券取引所プライム市場上場企業のうち、平均時価総額が一定規模以上の企業へSSBJ基準を段階的に適用する制度が整備されました。

企業区分SSBJ基準の適用開始第三者保証のロードマップ2026年8月時点の位置づけ
平均時価総額3兆円以上2027年3月期2028年3月期から導入する方針開示府令等で確定
平均時価総額1兆円以上3兆円未満2028年3月期2029年3月期から導入する方針開示府令等で確定
平均時価総額5,000億円以上1兆円未満2029年3月期2030年3月期から導入する方針金融審議会WG報告で適当とされた時期。今後の府令等の制度整備を確認する
平均時価総額5,000億円未満引き続き検討引き続き検討開示状況や投資家ニーズを踏まえて引き続き検討

時価総額は、単一時点の株価ではなく、有価証券報告書等の対象事業年度の前事業年度末と、その前4事業年度末の計5事業年度末における時価総額の平均値で判定します。

第三者保証は、各企業区分のSSBJ基準適用開始の翌期から導入するロードマップが示されています。最初の2年間はScope1・2、ガバナンス、リスク管理を対象とする限定的保証とする方向ですが、保証基準、品質管理基準、登録制度などの詳細は継続確認が必要です。

適用開始年度とその翌年度には、SSBJ基準に従う情報の一部を有価証券報告書等へ記載せず、翌期の半期報告書の提出期限までに訂正報告書で追加する「二段階開示」が可能です。

出所:金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ報告

開示項目

以下に一般開示基準と気候関連開示基準 の主な具体的開示項目を整理します。

一般開示基準
(全サステナ領域が対象)
一般開示基準
(全サステナ領域が対象)
ガバナンス・サステナ関連リスク・機会の監督(第9項)
・経営者の役割(第10項)
・気候関連リスク・機会の監督(第10項)
・経営者の役割(第11項)
戦略・サステナ関連のリスク・機会(第14項)
・ビジネスモデル及びバリューチェーンに与える影響(第15項)
・現在及び短期・中期・長期における財務的影響(第16~19項)
・戦略及び意思決定に与える影響(第23項)
・レジリエンス(第24~27項)
・気候関連のリスク・機会(第17~19項)
・ビジネスモデル及びバリューチェーンに与える影響(第20項)
・現在及び短期・中期・長期における財務的影響(第21~24項)
・戦略及び意思決定に与える影響(第28~29項)
・レジリエンス(第30~39項)
リスク管理・サステナ関連リスクの特定・評価・管理(第29項)・気候関連リスクの特定・評価・管理(第41項)
指標と目標・重要テーマ(企業により異なる、人的資本・自然資本等)別指標(第32~38項)
・目標と進捗(第39項)
・GHG排出量(スコープ1/2/3)(第47~76項)
・気候関連のリスク及び機会(第79~81項)
・資本投下(第82項)
・内部炭素価格(第83項)
・報酬(第84~85項)
・その他の管理指標(第87~91項)
・目標と進捗(第92~99項)

企業が取り組むべき対応ポイント:実務に直結する4つの領域

1. SASB基準を活用した「財務影響に基づくマテリアリティ分析」

SSBJ=ISSB準拠のため、企業価値(財務)に影響するサステナ項目を中心にマテリアリティを特定する必要があります。

SASBを使う理由

  • ISSB基準がSASBを公式参照
  • 業種別に財務影響の大きいテーマを提示

2. 気候関連データと他の重要項目も含めたデータ整備とガバナンス

以下に示すような気候関連データのみならず、企業価値に影響するサステナ項目毎に、指標を設け進捗管理を行うとともに、有価証券報告書(期末後3ヶ月以内)に開示することが求められているため、収集・管理をタイムリーに行うことが重要となります。

■気候関連

  • Scope1/2/3のGHG排出量
  • 物理リスク・移行リスク、機会評価
  • エネルギー使用量データ

■その他の重要テーマ(例)

  • 人的資本(離職率、人材開発投資)
  • 製品安全性・データセキュリティ
  • サプライチェーンリスク

3. 財務関連サステナ情報の管理と開示を強化する

SSBJ基準の核心の一つは、「財務に影響するサステナ情報=財務関連サステナビリティ情報」の管理・開示が必要になることです。サステナ担当者だけでは対応できず、「財務・サステナ・内部統制の三位一体」が必要となります。

■これが重要な理由

  • IFRS S1の基本概念が「財務報告の利用者にとって重要なサステナ情報」
  • 投資判断に直結する項目(気候、人材、サプライチェーン)が対象
  • 財務(CFO)との連携が不可欠
  • 開示の誤りは財務諸表の信頼性にも波及するリスクがある

4. ガバナンス体制の再構築と有価証券報告書対応

「財務に影響するサステナ情報=財務関連サステナビリティ情報」の管理するためには、サステナ担当者だけでは対応できず、財務と同等のガバナンス体制の構築・運営が必要となります。

  • 取締役会の監督責任を明確化
  • 経営(CFO・CSO)との連携強化
  • ERMとの統合(リスク管理の整合性)
  • 有価証券報告書で開示するための内部統制・証跡管理

SSBJ対応は義務を超えた価値創造:2050年社会要請に応える経営基盤

SSBJ基準は単なる規制ではなく、以下の価値向上を生み出すことを理解し、経費ではなく投資として対応していくことが重要です。

■ 2050年カーボンニュートラル社会への対応基盤を構築
 社会の信頼性・レピュテーション向上。

■ 資本コストの低減・投資家評価の向上
 高品質な開示が投資判断に直結。

■ 経営とサステナの統合により、意思決定の質が向上

■ トランジション戦略や新規事業機会の可視化
 開示が経営戦略そのものを強化する。

まとめ

  • SSBJ基準とは:ISSB基準を日本向けに整備した開示基準
  • 対象企業:プライム市場企業(出典:金融庁・SSBJ)
  • 導入スケジュール:2025年3月期から時価総額上位企業に段階適用
  • 対応ポイント
    1. SASB基準を活用したマテリアリティ分析
    2. 気候中心+他テーマのデータ整備
    3. 財務関連サステナ情報の管理・開示強化
    4. ガバナンス・内部統制の整備
  • 本質:2050年に向けた企業価値向上の重要施策

※SSBJ対応の具体的なロードマップについては以下の記事をご覧ください。

→ SSBJ・CSRDへの対応:非財務情報開示の意義と重要性

出典

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