EU CBAM対応は「計算」だけでは終わらない|実データ報告で押さえる3つの実務ポイント

問題提起

CBAMでは、対象品目を確認し制度の概要を把握しただけでは、実務対応は進みません。実データで報告する場合は、どの製品・工程を算定対象にするか、実データとデフォルト値をどう使い分けるか、必要なデータや証憑をどう揃え、社内外でどう連携するかまで設計する必要があります。

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、2026年1月1日から確定期間に入りました。2026年8月には、欧州委員会からInstallation Operator向け・Verifier向けのガイダンスも公表され、鉄鋼二次加工における実データ算定や第三者検証の扱いが具体化しています。ねじ・ボルトや伸線等も実データ算定・検証の対象となり得るほか、前駆体の投入量や歩留まりを体化排出量へ反映する考え方も整理されました。

こうした制度の具体化を受け、2026年8月31日、Booost株式会社とパーソルビジネスプロセスデザイン株式会社は、「高炉・電炉・伸線・ネジボルト・その他鉄鋼製品メーカー等向け EU CBAMの実データ報告対応の実際」をテーマに対面セミナーを開催しました。

本レポートでは、当日の講演内容を次の3つの実務ポイントに沿って整理します。

  1. 何をCBAM対象として算定するかを決める
  2. 実データ/デフォルト値を使い分ける
  3. 実データを使う場合は、データ・証憑・検証・情報連携まで一体で設計する


開催背景・概要

Booostでは2026年4月から、CBAMの実データ報告に関するPoC(概念検証)を進めてきました。実証を進める中で、算定方法そのものに加え、モニタリング計画、社内外のデータ収集、サプライチェーン上の情報連携、第三者検証まで含めて準備する必要があることが見えてきました。

その知見を実務担当者と共有するため、2026年8月31日、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 豊洲本店で対面セミナーを開催しました。対象は、高炉・電炉・伸線・ネジボルト・その他鉄鋼製品メーカーや、EU向けに鉄鋼・アルミニウム製品を輸出する企業等です。

当日は、Booost株式会社 ドメインエキスパート部の植村哲士が、モニタリング計画の作成、体化排出量の算定・報告、第三者検証、サプライチェーンでの情報連携まで、実データ報告の一連の流れを解説しました。

登壇者

Booost株式会社 ドメインエキスパート部 植村 哲士

製品カーボンフットプリントの算定・データ交換に関するプロダクト開発をリード後、2025年4月より現職。製品に関する欧州環境規制の分析や「booost PCF」の派生プロダクトの企画・開発、標準調査・研究・コンサルティング業務に従事。

1.まず「何を算定するか」を決める

実データ報告の最初の作業は、計算式を決めることではなく、算定対象と境界を確定することです。

対象となる製品・CNコード、System Boundaryに含める製造工程、算定に取り込む前駆体を整理したうえで、必要なデータを特定します。CBAMではEU ETSの20MW閾値をそのまま適用するのではなく、対象工程に帰属する排出を算定する考え方を押さえる必要があります。

2026年8月のガイダンスでは、ねじ・ボルトや伸線等も実データ算定・検証の対象となり得ることが示されています。歩留まりが変われば、製品当たりの前駆体由来排出量も変わります。

算定境界が曖昧なままでは、後段のデータ収集や第三者検証の準備も定まりません。自社の製造工程とデータの流れを確認し、最初に算定範囲を固めることが実務の起点になります。

ここから先は会員限定コンテンツです:算定範囲を決めた後は、実データを使うか、デフォルト値を使うかを判断します。後半では、その判断軸と、実データを使う場合に必要となるデータ・証憑・第三者検証の準備を紹介します。

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