ESG評価対応を「個別対応」から「共通管理」へ― CDP・S&P Global CSA・MSCI・FTSE Russellを共通情報から整理する ―

はじめに

CDPへの回答、S&P Global CSAへの回答、MSCIの評価確認、FTSE Russellのレビュー。同じGHG削減目標や人権方針を扱っていても、企業側に求められる対応は同じではありません。質問票へどう回答するか、どの情報を公開するか、どの評価項目が重視されるか。各評価・回答の仕組みを理解したうえで、それぞれに対応する必要があります。

金融庁の2026年6月の調査でも、「類似する質問を統合してほしい」「設問ごとの差を明確にしてほしい」といった企業側の声が紹介されています。ESG評価は、指数運用や投資家との対話にも関わるため、自社にとって重要な評価・回答を見極め、継続的に対応できる体制が必要です。

本記事では、共通情報を整理する → 回答・公開の違いを理解する → 各評価・回答への反映方法を確認する → 重要な課題を改善する → 担当部門を決めて継続管理する、という流れで整理します。

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本記事で紹介する考え方を、必要な箇所だけ使える軽量なExcelテンプレートにまとめています。評価・回答の比較、根拠情報の管理表、課題・対応管理表、運用・公式資料を収録し、自社で必要な項目だけ確認・記入できる構成です。

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1.4つのESG評価・回答で共通する企業情報

CDP、S&P Global CSA、MSCI、FTSE Russellでは、企業側の対応方法が異なります。

CDP・S&P Global CSAでは、企業が質問票を通じて情報を提供する「回答」が中心です。一方、MSCI・FTSE Russellでは、企業が公表した情報を評価側が収集・分析するため、「公開」が企業側の基本的な対応になります。S&P Global CSAでは公開情報が参照・反映される場合もありますが、企業実務としては質問票への回答が中心です。

企業側の基本動作は「回答」と「公開」に分かれます。

※各評価・回答の関係を把握しやすいよう、SLM編集部で簡略化しています。

一方、評価・回答の土台になる企業情報には多くの重なりがあります。 環境ではGHG排出量や削減目標、水・自然資本、社会では人権方針や人的資本、サプライチェーン、ガバナンスでは取締役会の監督やリスク管理などです。

企業側で元となる情報を整理しておくことで、CDP・S&P Global CSAでは質問票への回答に、MSCI・FTSE Russellでは公開情報として、それぞれの評価方法に合わせて反映しやすくなります。

2.元になる企業情報を「共通の根拠情報」として管理する

複数の評価・回答に使う企業情報は、元となる情報を一つに整理しておくと管理しやすくなります。

本記事では、各評価・回答に反映する数値、方針、目標、実績、公開資料などを共通の根拠情報と呼びます。これらに対象年度、対象範囲、担当部門・責任者、出典、更新日などの管理情報を紐づけて管理します。

管理軸
テーマ 気候変動、水、人的資本、人権 など
情報の種類 ガバナンス、方針、目標、施策、実績 など
管理情報 年度、対象範囲、担当部門・責任者、出典、更新日、利用先など

CDP、S&P Global CSA、MSCI、FTSE Russellでは分類や用語が異なりますが、企業側では、ガバナンス、方針、リスク・機会、目標、施策、実績、保証など、同じ種類の情報を繰り返し扱います。ここでは、それらを各評価・回答へつなげるための企業側の管理軸として整理しています。

例|GHG削減目標

ヤクルトグループは「環境目標2030」で、Scope 1・2排出量を2030年度までに2022年度比42%削減する目標を公表しています。対象は本社および国内外の全連結子会社です。

社内では、目標値だけでなく基準年や対象範囲を管理し、関連する施策や実績は別の根拠情報として紐づけます。

こうしておくと、目標や実績を更新した際に、関連する施策や、各評価・回答で確認が必要な情報まで追いやすくなります。

3.同じ企業でも評価結果が異なる理由

ここでは、ヤクルト本社を例に見てみます。
同社が2026年5月に公表した資料では、主要なESG評価として次の結果が掲載されています。

評価・回答 公表されている評価 評価尺度・最高評価
CDP 2025 気候変動:B/水セキュリティ:A/フォレスト:B A
S&P Global CSA 42 100
MSCI ESG Rating BBB AAA
FTSE Russell ESG Rating 4.1 5.0

※出典:株式会社ヤクルト本社「2026年3月期 決算短信補足説明資料」(2026年5月12日)

これらは評価対象や尺度が異なるため、数値だけを横並びにして比較することはできません。

ESG評価のばらつきを実証的に分析したBerg、Kölbel、Rigobonの研究では、評価差が生まれる主な要因を次の3つに整理しています。

続きでは、評価結果の違いを生む「3つの要因」と、4つの評価・回答で実務上確認すべきポイントを整理します。
ヤクルトグループのGHG削減目標を例に、対応の考え方や優先順位も紹介します。
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