ドイツ企業団体、サプライチェーン法(LkSG)の停止を要求 EU指令との整合性が焦点

ドイツの主要業界団体が、サプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)の運用停止を求める動きを強めています。VDMA(ドイツ機械工業連盟)やBAVC(連邦化学使用者連盟)など、合計17団体は1月29日、LkSGの完全停止を求める共同声明を公表しました(ドイツ語のプレスリリース)。

業界団体の主張:改正案だけでは企業負担の軽減が不十分

共同声明では、現在審議中のLkSG改正法案について、報告義務の廃止注意義務違反に対する罰則の軽減にとどまっており、「企業負担の軽減としては不十分」と指摘しています。そのうえで、LkSGの完全停止に加え、**EUの企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)**について、2025年12月の政治合意で示された簡素化を迅速に実行するよう求めました。

また、仮にLkSGが停止されない場合でも、LkSGの適用基準(国内従業員数1,000人以上)を、CSDDD簡素化法案で想定される適用対象基準(注2)に直ちに合わせるべきだと主張しています。ドイツ独自の基準が先行して残ることで、ドイツ企業に競争上の不利法的な不確実性が生じる可能性がある、という懸念です。

さらに、CSDDDの国内法化期限が2028年7月26日、企業への適用開始が2029年7月26日へ延期される見込みである点にも触れ、単に先延ばしにするのではなく、移行期間中も「必要な措置を直ちに実施する」よう要請しています。

BAFAの対応:報告書審査は停止、一方で注意義務は継続

2025年5月に発足したメルツ政権は、連立協定書で「CSDDDに置き換える形でLkSGを廃止し、移行期間中の企業負担を軽減する」方針を明記していました(2025年4月11日記事参照)。その後、連邦内閣は9月3日に、LkSG改正法案を承認しています。主な内容は以下の2点です。

  • LkSGの報告義務2023年1月1日まで遡って廃止
  • 注意義務については、重大な違反に限定して罰金を科すなど、罰則を軽減

この動きを受け、LkSGの履行確保を担う連邦経済・輸出管理庁(BAFA)は10月1日、(1)報告書の審査を即時停止し、(2)罰則は特に深刻な違反(注3)にのみ適用する、と発表しました。11月7日以降は、BAFAのポータルから報告書を提出できない状態になっています。

ただし、これはあくまで一時的な行政措置であり、人権・環境に関する注意義務そのものは引き続き適用される点には注意が必要です。

今後の見通し:議会審議の行方を要注視

連邦内閣が承認した改正法案は、2026年1月16日に連邦議会(下院)で初めて審議され、その後、追加審議のため委員会に付託されました。今後の審議・立法プロセス次第で企業実務への影響が変わり得るため、引き続き動向を注視する必要があります。

まとめ

ドイツの主要業界団体は、企業負担の大きさやEU規制との整合性を理由に、サプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)の完全停止を求める声明を発表しました。現行の改正案では報告義務の廃止や罰則軽減にとどまり、十分な負担軽減にはならないとの見方が示されています。

一方で、政府はCSDDDへの移行を前提に制度見直しを進めており、報告書審査の停止など暫定的な運用変更も始まっています。ただし、人権・環境に関する注意義務自体は継続しており、企業に求められる対応が完全に緩和されたわけではありません。

今後は、連邦議会での審議やEU指令との整合を踏まえた制度設計が焦点となり、ドイツ企業の競争力やサプライチェーン管理のあり方に大きな影響を与える可能性があります。企業としては、法改正の動向を注視しつつ、引き続き人権・環境リスク管理体制の整備を進めることが重要といえます。

参考

https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/02/9f0879b5299da083.html

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