英国CBAM:2025年法案に向けた最新発表と企業への影響

英国政府は、2027年1月1日のCBAM(炭素国境調整メカニズム)導入に向け、2025年度予算発表と併せて主要な制度変更・技術的修正を公表しました。本記事では、最新の政策動向と企業が押さえておきたいポイントを整理します。

1. 間接排出のCBAM対象外扱いが2029年まで延期

英国政府は、CBAM対象製品の生産に伴う間接排出を、2027年の制度開始時点では対象に含めない と発表しました。
最も早い対象化は2029年以降となり、EII補償制度への継続的支援が背景とされています。

2. 精製品の扱いをめぐる「Call for Evidence」開始へ

エネルギーセキュリティおよび産業基盤における製油所の重要性を踏まえ、政府は燃料部門に関するエビデンス募集(Call for Evidence) を実施予定です。
併せて、将来的な精製油製品のCBAM対象化の可能性についても検討が進められます。

3. 2025年4月協議を踏まえた技術的な法改正

英国政府は、2025年4月の協議結果を受け、以下の技術的修正を法案に反映しました。

(1)無償排出枠調整の算定方法
CBAM税率の算定における無償排出枠は、基準期間のセクター平均排出に基づき、英国ETSにおける無償枠の段階的廃止を反映して毎年更新。

(2)炭素価格控除の拡大
他国のCBAMなどで発生した炭素価格を控除可能に。

(3)前駆物品に関する二重課税防止措置
英国内で生産された前駆物品が複雑なCBAM対象品に含まれて輸入される場合、二重の炭素価格負担を回避する免除措置を導入。

(4)一時輸入に関する免除規定

一時輸入されたCBAM対象品について、関税の全額免除を含む特例を設け、英国市場に流入しない場合はCBAM非適用に。

(5)過払い返金請求の期限設定

申告誤りにより過払いが生じた場合、返金請求期限は3年。

(6)グループ優遇措置の廃止

企業へのメリットが限定的とのフィードバックを踏まえ、グループ扱い制度を撤廃。

4. 企業が押さえるべき実務ポイント

  • 間接排出の対象化が2029年以降になることで、短期的な報告・データ整備負担は軽減
  • 一方で、前駆物品の排出算定や炭素価格控除の運用など、国際サプライチェーンを持つ企業は制度理解が不可欠
  • 2027年施行に向け、今後数カ月で追加文書・二次立法の公表が見込まれるため、情報アップデートの継続的なフォローが必要

5. 関連リンク(公式資料)

6. Booost過去リリース・ナレッジとの関連

今回発表された英国CBAMの最新動向は、これまで当社が取り扱ってきたテーマとも深く関係しています。これまでのリリースやセミナーで触れてきた論点が、今回の法案修正にもそのままつながっていますので、あわせてご覧いただくとより理解が深まります。

関連プレスリリース

「Booost、EUとイギリスの炭素国境調整措置のパブリックコメントへの対応を実施」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000205.000056793.html

過去ウェビナー資料

「英国CBAM最新動向:2025年法案の要点と企業への影響
― 技術コンサルテーション対応のポイントと実務担当者が押さえるべき留意点 ―」
【過去ウェビナー資料】英国CBAM最新動向:2025年法案の要点と企業への影響

今回の政策アップデートは、上記リリース・セミナーで取り上げた論点と直結しており、今後の制度設計の方向性を示す重要な内容です。ぜひ併せてチェックしてみてください。

記事問い合わせCTA