GRI 103:Energy 2025とは?新エネルギー基準のポイント解説

GRI 103:Energy 2025とは?新エネルギー基準のポイント解説

以前の記事「GRI 102:Climate Change 2025とは?新気候変動基準のポイント解説」では、新たに公表されたGRI 102:Climate Change 2025について紹介しました。 本記事では、それと同時(2025年6月)に公表された「GRI 103:Energy 2025」について解説します。

導入の背景

「GRI 103: Energy 2025」は、従来の「GRI 302: Energy 2016」を改訂・発展させた基準です。エネルギー消費・削減、効率性、再生可能エネルギーの調達と移行などの分野における国際的に合意されたベストプラクティスを反映し、近年の動向や関連する政府間文書との整合性を図ることを目的としています。 本改訂を通じて、企業はステークホルダーの期待に応える形で、エネルギーに関する重要な影響とその対応策を明確に開示できるようになります。

GRI 103: エネルギーの主な特徴

エネルギー方針とコミットメントに関するマネジメント情報の開示

本基準では、脱炭素経済への移行におけるエネルギー方針やコミットメントの役割を明確にするために、新たなマネジメント情報の開示項目が追加されました。 例えば、企業はエネルギー消費や再生可能エネルギーへの移行による経済・環境・社会に及ぼす影響について記述することが求められています。また、エネルギーに関する目標設定を含むコミットメントの策定、ステークホルダー・エンゲージメントの役割に関する報告についても、ガイダンスが追加されています。

企業内部におけるエネルギー消費と発電

エネルギーの消費と発電については、開示要件の強化と再構成が行われ、内容がより明確になっています。特に、購入電力と自家発電、売電に関しては、エネルギー源ごとの内訳に加え、それが再生可能か否かの属性情報を開示することが求められます。 また、非化石証書などの契約手段を活用している場合には、その品質基準を満たしているかどうかの報告も必要です。さらに、燃料や電力が消費される具体的な活動内容、並びに自家発電による非燃料型の再生可能電力の消費についても、個別に報告することが求められています。これらの開示を支援するための報告テンプレートもあわせて提供されています。

バリューチェーンにおける上流・下流のエネルギー消費

本基準では、組織のバリューチェーンにおいてエネルギー消費が顕著な上流と下流のScope 3カテゴリを特定し、明示することが求められています。これにより、企業のバリューチェーン全体のエネルギー使用に対する認識が深まるとともに、情報開示の透明性の向上にもつながります。また、一次データが利用できない場合の推計方法に関するガイダンスも示されています。

エネルギー原単位

エネルギー原単位を報告する際、比率だけでなく、分子に該当するエネルギー消費量も開示することが明確に定められています。また、分子と分母それぞれについて、一貫性のある組織境界を設定するための指針も加えられています。

まとめ

本基準は、エネルギー消費の影響をより包括的かつ定量的に把握ことを促す内容となっており、脱炭素経営を実質的に推進するための土台となります。企業には、方針や目標、使用状況を一貫した視点で整理し、バリューチェーン全体を視野に入れた対応が求められます。今後は、エネルギー管理と再エネ導入の進捗をどう示すかが、企業の持続可能性に対する信頼を左右する重要な要素となるでしょう。

出典

GRI GRI Resource Center

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