欧州電池規則:原材料デューデリジェンス(DD)義務の適用が延期
目次
欧州電池規則(Regulation (EU) 2023/1542)で規定されている原材料デューデリジェンス(Due Diligence:DD)義務について、EU は 2025年7月に適用開始時期の延期を正式に決定しました。
本来 2025年8月18日に開始される予定だった DD 義務は、EU 理事会の決定により 2027年8月18日へと 2 年間延期されています。
本記事では、延期の背景、影響範囲、今後の見通し、そして日本企業が取るべき実務対応を整理します。
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原材料デューデリジェンス(DD)義務とは?
デューデリジェンス義務(Article 48–50)は、電池製造に使用される主要原材料(コバルト、リチウム、ニッケル、天然黒鉛など)について次の内容を企業に求めるものです。
- 採掘地・精錬地の特定
- 強制労働・人権侵害などのリスク評価
- リスク緩和措置の実施
- 年次報告書の作成
- サプライチェーンにおける透明性の確保
DD は電池規則の中核であり、CSRD や CSDDD と並ぶ EU のサプライチェーン透明化政策の要となっています。
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なぜ延期されたのか ― 2025年7月の決定背景
2025年7月、EU理事会は DD 義務の実施延期を採択しました。主な理由は以下のとおりです。
① Delegated Act(委任規則)の整備が間に合わなかった
DD 義務の具体的運用方法を定める委任規則が遅れており、企業が遵守できる環境が整っていませんでした。
② 原材料サプライチェーンの準備不足
特に採掘・精錬段階の企業は、トレーサビリティ体制が成熟しておらず、求められる情報提供能力に大きな差があることが判明しました。
③ CSRD・CSDDD との制度重複の懸念
EUは複数のデューデリジェンス制度を並行して進めており、電池規則のDDだけが先行すると企業負担が二重になる懸念がありました。
延期された内容と影響範囲
延期の対象は次の領域です:
- 原材料DD義務(Article 48–50)
- リスク評価プロセス
- リスク緩和措置の実施
- 年次報告書の提出
- サプライチェーンの管理体制
一方、以下の主要義務は影響を受けません:
- 電池パスポート
- カーボンフットプリント(CFP)
- 再生材含有率
- BMS(Battery Management System)データ報告
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企業への影響:猶予はあるが、準備は止めるべきではない
延期により形式上の猶予は生まれましたが、企業は準備を緩めるべきではありません。その理由は以下の通りです。
- 原材料データ整備は年単位で時間がかかる
採掘・精錬企業のデータ成熟度には大きなばらつきがあり、リスク評価の仕組みを整えるには長期的対応が必要です。作業期間が長くなったことでしっかりと取り組むことができるようになった、と理解することをお勧めします。
- 電池パスポートのデータ構造と密接に関連
DD の進捗が遅れると、パスポート提出に必要な上流データにも影響します。サプライヤーとのエンゲージメントを実施しなければならないこと自体は、何ら変わっておりません。
- EUの政策方向は「延期=緩和」ではない
むしろ CSDDD などの制度と統合され、より強固で実効性のある DD 義務へ進化する見通しが強いです。
サプライヤー協働が最重要ポ今後の見通しと企業が取るべき対応
延期後も DD 義務は廃止されず、制度の精緻化のための「時間稼ぎ」と捉えるのが正確です。
企業は次のステップで準備を継続すべきです。
- 原材料サプライヤーへのデータ依頼テンプレート整備
- リスク評価用の内部体制(担当部署・文書・フロー)の構築
- 電池パスポート用のデータと整合性を確保
- 証跡管理・データ保存方法の標準化
- 委任規則(Delegated Act)の採択スケジュールをモニタリング
延期を活かし、準備精度を高めることが競争力を生むポイントになります。
まとめ:早期対応× 継続改善が競争力につながる
欧州電池規則は、単なる規制ではなく、企業のデータ管理とサプライチェーン運営を根本から変える要請です。
2024〜2025年にどれだけ準備を進められるかが、2026年以降の競争力を左右します。とはいえ、対応製品に対応していかねばなりません。そこで企業全体のガバナンス体制をイメージしつつ、対応していくことが現実解となるでしょう。
出典:
European Council Press Release(2025年7月18日)
「EU Council adopts law to delay due diligence rules for batteries」
