カーボンフットプリント(CFP)とは ― 製品のGHG見える化から企業全体の削減へ

製品やサービスの温室効果ガス(GHG)排出量を定量的に「見える化」するカーボンフットプリント(CFP:Carbon Footprint of Product)。

この考え方は、製品単位の環境影響評価から始まり、いまや企業全体のGHG排出量削減(スコープ1・2・3)を実現するためのアプローチとして注目を集めています。

国際的な開示規制の強化と、取引先・消費者からの環境配慮要求の高まりを背景に、CFPは脱炭素経営を推進する重要テーマの一つです。

CFPとは ― 製品単位で排出量を可視化する仕組み

カーボンフットプリント(CFP)は、製品やサービスが「原材料調達」から「廃棄・リサイクル」までのライフサイクルを通じて排出する温室効果ガスをCO₂換算で算定する手法です。

経済産業省と環境省が共同で策定した「カーボンフットプリント ガイドライン」(2024年改訂版)では、以下のポイントが整理されています。

  • 算定範囲の明確化(Cradle to Gate/Cradle to Grave)
  • 一次データと二次データの使い分け
  • 算定目的に応じた方針設定と再現性の確保

製品単位のCFPは、製品開発や調達方針の見直し、さらにはサプライチェーン全体の排出構造を可視化・改善する出発点になります。

これにより、企業単位の排出量(スコープ1・2・3)削減戦略の土台を築くことができます。

国際的な規制動向 ― 義務化と透明性の強化

2025年以降、CFPをめぐる制度環境は大きく変化しています。

欧州

  • 炭素国境調整メカニズム(CBAM):2026年から正式運用が始まり、鉄鋼・化学・電池など高排出製品の輸入業者に排出量の申告義務が課されます。(CBAMでは体化排出量が対象であること、算定範囲がCFPとは異なる等の違いはあります)
  • 欧州電池規則・エコデザイン規則・デジタルプロダクトパスポート(DPP):製品単位でのGHG算定とデータ連携を求める制度が段階的に拡大していきます。

日本

  • 経済産業省と環境省は「CFPルール策定支援事業」を通じ、業種別・製品別の算定ルール(PCR:Product Category Rules)整備を進めています。
  • SSBJ(サステナビリティ基準委員会)やIFRS/ISSB基準との整合性を意識し、非財務情報の統合開示に向けた議論が進展しています。

国際標準化の動き

  • ISO 14067(CFP算定規格)の改訂が進み、サプライチェーン全体での一次データ活用が推奨されています。
  • WBCSD PACT(Partnership for Carbon Transparency)が主導する国際的データ連携基準も普及が拡大しています。

これらの動向は、製品CFPの算定がもはや任意ではなく、市場参入や取引継続の前提条件となることを意味します。

CFP算定を企業全体のGHG削減につなげるために

CFPを単なる製品分析に終わらせず、企業全体のGHG愛出量削減につなげていくためには、次のような仕組みづくりが重要です。

  1. ライフサイクル視点での削減機会の特定 原材料の転換、省エネ、物流最適化、リサイクル設計など、CFPで見える化された「排出ホットスポット」に重点的に対策を打つ。
  2. サプライチェーンとの協働体制 取引先との間で一次データを共有し、共通ルールに基づく算定を進めることで、上流・下流双方での削減を促進。
  3. 第三者保証や監査対応の準備 算定履歴、データソース、排出係数などの根拠情報を整理し、外部保証を受けられる体制を整備する。
  4. デジタル基盤による継続的モニタリング 月次単位等での排出データ分析や年度比較を行い、削減目標の進捗を可視化する。

こうしたサイクルを確立することで、CFP算定は企業のESG経営を支える「定量的な羅針盤」として機能します。

まとめ

カーボンフットプリント(CFP)は、製品単位の環境影響評価から出発し、いまや企業全体のGHG削減戦略の中核を担う仕組みへと進化しています。 製品ごとの排出量を精緻に可視化し、そこから得られたデータを経営・調達・設計・開示に活かすことで、企業全体のGHG排出量(スコープ1・2・3)を減らす最も実効性のあるアプローチが形づくられます。

今後、CFPは単なる算定業務ではなく、サプライチェーンを通じた共創型のGHG削減へと拡張していくでしょう。

出典

記事問い合わせCTA