カーボンフットプリント(CFP)の基礎とその有用性ー製品単位の「見える化」を企業全体の戦略にどう活かすか
目次
前回までの記事では、カーボンフットプリント(CFP:Carbon Footprint of Product)について、
- なにを算定するのか(原材料調達〜廃棄・リサイクルまでのGHG排出量)
- どう算定するのか(ガイドライン・ISO・GHGプロトコルに基づくステップ)
- どのような制度・規制と関係しているのか(国内ガイドライン、CBAM、欧州電池規則など)
を整理してきました。
本記事ではその上で、「CFPの基礎をもう一歩だけ掘り下げつつ、それが企業にとってどのように有用なのか」という視点から、実務で押さえておきたいポイントをまとめます。
すでに算定を始めている企業の整理用メモとしても、これから取り組む企業の検討の土台としても使える内容を意図しています。
1.CFPの“基礎”をもう一度整理する
1-1 「製品単位」の環境指標であるということ
CFPは、製品・サービスのライフサイクル全体(原材料調達、生産、輸送、使用、廃棄・リサイクルなど)で排出される温室効果ガス(GHG)を、CO₂換算量として数値化する仕組みです。
ここで重要なのは、あくまで評価の単位が「製品」であることです。
工場単位や事業所単位の排出量(スコープ1・2)では見えにくかった、「この製品はどの工程で、どれくらい排出しているのか」という構造を明らかにできる点が、CFPの出発点です。
1-2 国際規格(ISO 14067)と国内ガイドラインという土台
CFPは、国際的には ISO 14067 という規格で位置づけられています。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の規格である ISO 14040 / 14044 をベースに、気候変動(温室効果ガス)に特化した製品評価のルールを定めたものです。
日本では、経済産業省と環境省が「カーボンフットプリント ガイドライン」を取りまとめ、2024年に実践ガイドの改訂も行われました。他記事で紹介したとおり、このガイドラインでは、
- 算定方針(目的・用途)の明確化
- 算定範囲(Cradle to Gate/Cradle to Grave)の設定
- 一次データ・二次データの扱い方
- 結果の検証と説明の仕方
といった、実務に必要な論点が整理されています。
つまりCFPは、国際規格と国内ガイドラインに支えられた標準的な枠組みとして整備されており、企業独自の我流の算定からは卒業していくべき段階に来ています。
