欧州電池規則とは?背景から要求事項まで簡単解説

欧州連合(EU)では2023年8月、従来の電池指令を強化するため、「欧州電池規則」が発効され、2024年2月から適用することが発表されました。

本規則は、規模や所在に関わらず、電池をEUで流通する全ての事業者に適用される規則であり、EU域内で使用されるあらゆる種類の電池が対象で、環境負荷を最小限に抑えることを目的としてライフサイクル全般に関する規制が提案されています。遵守できない場合はEUへの輸出が制限されることになります。
 
今回はこの欧州電池規則の内容について簡単に解説します。

目次[非表示]

  1. 1.欧州電池規則の背景
  2. 2.規制対象
  3. 3.主な要求事項
  4. 4.まとめ

欧州電池規則の背景

欧州電池規則が制定された背景の一つは、EUが2019年に発表した「欧州グリーン・ディール」で掲げている、2050年までの温室効果ガス排出量ネットゼロ目標の達成です。

また、今後自動車産業の主流が化石燃料車から電気自動車になることから、電池需要が急速に拡大し生産量が増えていくことが予想され、電池製品の環境負荷の抑制と循環利用を推進するための法的なフレームワークが必要と考えられること、経済価値の視点から環境配慮型電池の開発と普及を通じて電池産業市場での競争力を向上するという持続可能な経済戦略の創出もあると考えられます。
 
参考:日本貿易振興機構 EUバッテリー規則とドイツを中心としたバッテリー生産・リサイクルの動き



規制対象

欧州電池規則では形状、体積、重量、設計、材料組成、化学組成、用途、目的を問わず、EU域内で販売されるすべての電池が規制対象となります。
規制対象の詳しいカテゴリは以下の通りです。

  • 携帯用電池
  • 始動・照明・点火(SLI)用電池
  • 軽輸送手段(LMT)用電池
  • 電気自動車(EV)用電池
  • 産業用電池
  • 製品に組み込まれるか、または製品に組み込まれるように設計された電池

複数のカテゴリに該当する場合、最も厳しい要件が適用されるカテゴリに該当するとみなされます。ただし、以下の対象は適用外となります。

  • 特定軍事目的を意図していない製品を除く加盟国における重要な安全保障上の利益、武器、弾薬、戦争物資の保護に関連する装備
  • 宇宙に送られるように設計された装備

 
出所:欧州連合 REGULATION (EU) 2023/1542 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 12 July 2023 concerning batteries and waste batteries, amending Directive 2008/98/EC and Regulation (EU) 2019/1020 and repealing Directive 2006/66/EC



主な要求事項

従来の含有化学物質制限等に加えて、欧州電池規則で強化された主な項目は以下の4項目です。

  1. カーボンフットプリントの申告義務
    商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの温室効果ガス排出量を評価するのがカーボンフットプリント(CFP)です。欧州電池規制では、製造工場ごとの各電池型式に対して、第三者の検証機関が証明したCFPの申告を作成しなければなりません。ただし、使用段階はメーカーの直接的な影響とは関係がないため計算から除外することができます。

    CFPの申告開始時期は電池ごとに定められており、例えばEV用電池の場合は2025年2月から適用される予定です。

    また、2028年2月18日からはCFPの上限値が導入され、設定された上限値を超えた製品はEU域内での販売ができなくなります。


  2. サプライチェーン・デューデリジェンス
    欧州電池規則では、2025年8月18日以降、指定材料および指定材料を含む製品について、電池をEU市場に流通させる事業者に責任ある原材料調達を要求し、調達先における環境汚染、人権侵害等のリスクについて第三者の検証機関が証明した調査を義務付けています。

    また、事業者はサプライチェーンに関する管理するしくみを構築し、デューデリジェンス結果と第三者検証レポートを管理し、公開する必要があります。


  3. 製品情報のデジタル登録
    電池のバリューチェーンにおける透明性を高め、情報交換や追跡を可能にするため、2027年2月18日から、LMT用電池、2kWhを超える産業用電池、EV用電池においては「バッテリーパスポート」というデジタル記録システムに、性能、原材料構成、CFP等の情報を保存することが定められています。

    また、権限を持った人がいつでも登録した情報をQRコードから読み取れるようにする必要があります。


  4. リサイクル材の含有率
    2028年8月18日から、外部ストレージのみを持つものを除く2kWhを超える産業用電池、EV用電池および SLI 用電池で、活性材料にコバルト、鉛、リチウムあるいはニッケルを含む場合、活性材料ごとの割合に加え、それらの物質のうち生産段階由来の廃棄物や使用後の廃棄物からリサイクルされたものの割合に関する情報を年度別、製造工場及び型式ごとで開示することが要求されています。

    更に2031年8月18日以降、上記各物質のリサイクル材の割合が下記の最低含有率以上であることを技術文書で証明する必要があります。

    –コバルト:16%
    –鉛:85%
    –リチウム:6%
    –ニッケル:6%

欧州電池規則における主な要求事項の適用開始時期


出所:欧州連合 REGULATION (EU) 2023/1542 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 12 July 2023 concerning batteries and waste batteries, amending Directive 2008/98/EC and Regulation (EU) 2019/1020 and repealing Directive 2006/66/EC



まとめ

欧州電池規則はバリューチェーン全体の情報の統括と管理について電池に関する事業者に強い責務を課しています。このような動向を受け、日本の関連事業者、特にEUで電気自動車事業を展開している自動車メーカーにとって、2025年2月18日までにEV用電池のCFPの対応は急務であり、テータ収集から算定までの手間を考えても 、余裕はなく、早急に準備が必要です。

EU市場での競争力を維持するためには、ぜひ本規則についての理解を深め、自社やサプライヤーに対する影響を把握し、対応計画を策定し、実行していく必要があります。

電池のサプライチェーンに属する企業には、電池用原材料のCFP算定や自社の環境汚染や人権侵害等に関するデューデリジェンスを実施し、顧客からの要請に向け準備しておくことが重要です。


 
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